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【憲法】憲法総論・人権

憲法の意味

1.1.憲法とは

1.2.憲法最高法規

1.3.憲法の基本原理

2.人権

2.1.人権の分類

2.1.1.人権の分類

2.2.人権の享有主体

2.2.1.外国人の人権

2.2.2.法人の人権

2.2.3.公務員の人権

2.2.4.在監者の人権

2.3.人権の限界

2.3.1.公共の福祉

2.3.2.私人間の効力

2.4.幸福追求権

2.4.1.幸福追求権

2.5.法の下の平等

2.5.1.法の下の平等

2.5.2.一票の格差

2.6.自由権

2.6.1.思想・良心の自由

2.6.2.信教の自由

2.6.3.表現の自由

2.6.4.学問の自由

2.6.5.居住・移転・職業選択の自由

2.6.6.財産権

2.6.7.人身の自由

2.7.受益権

2.7.1.受益権

2.8.参政権

2.8.1.選挙権

2.9.社会権

憲法総論

憲法の意味

実質的意味の憲法 → 成文であると不文であるとを問わない

軟性憲法

法律と同等の手続で改正できる憲法

→ 頻繁に改正されていても、法律より改正が困難である憲法

= 硬性憲法

前文

法的規範性を有する

人権

人権の分類

人権享有主体

外国人の人権
  • 基本的人権の保障は、「権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」(最大判昭53.10.4)

「政治活動の自由」について

*「わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」(最大判昭53.10.4)

憲法22条2項の「外国に移住する自由」

「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されるものではない」(最判平4.11.6)

選挙権を付与する措置

*「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、・・・、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」(最判平7.2.28)

*「右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」(最判平7.2.28)

憲法93条2項にいう「住民」

地方公共団体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する

*「憲法93条2項にいう『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味する」(最判平7.2.28)

社会保障上の政策

  • 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約存しない限り、・・・その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、・・・、自国民を在留外国人よりも優先的に扱うことも、許される」(最判平元.3.2)

憲法13条の国民の私生活上の自由が国家権力に対して保護される

  • 憲法13条は、・・・、みだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、同条の趣旨に反して許されず、・・・ → 我が国に在留する外国人にも等しく及ぶ」(最判平7.12.15)

在留外国人の取扱い

*「普通地方公共団体が、・・・職員に在留外国人を任命することを禁止するものではない」としたうえで、

普通地方公共団体が職員に採用した在留外国人につき合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることは許される」(最大判平17.1.26)

外国人が地方公務員に就任すること

本来我が国の法体系を想定するところではない」(最大判平17.1.26)

法人の人権

「会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有する」としている(最大判昭45.6.24)

公務員の人権

政治運動禁止の要請

裁判官に対する政治運動禁止の要請 > 一般職の国家公務員に対する政治的行為禁止の要請(最大決平10.12.1)

「裁判官に対し『積極的に政治運動をすること』を禁止することは、必然的に裁判官の表現の自由を一定範囲で制約することにはなるが、・・・、憲法の許容するところであるといわなければならず、右の禁止の目的が正当、その目的と禁止との間に合理的関連性があり、禁止により得られる利益と失われる利益との均衡を失するものでないなら

→ 憲法21条1項に違反しない

というべきである」(最大決平10.12.1)

「政治的行為」

国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」

「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実に起こり得るものとして実質的に認められるものを指す」(最判平24.12.7)

公務員の争議行為

  • 「公務員は、・・・、勤労者たる公務員は、かかる政治的目的のために争議行為をすることは、二重の意味で許されない」(最大判昭48.4.25)

✗ 争議行為は表現の自由としての側面も有する

  • あおり行為等の罪として刑事制裁を科される

→ 違法性の強い争議行為に対するものに限る

→ あおり等の行為自体の違法性の強弱または社会的許容性の有無を論ずることは、いずれも、とうてい是認することができない

→ 「このように不明確な限定解釈は、かえつて犯罪構成要件の保障的機能を失わせることとなり、その明確性を要請する憲法31条に違反する疑いすら存在するものといわなければならない」(最大判昭48.4.25)

  • 人事院勧告の完全凍結に抗議して争議行為を行った公務員に対する懲戒処分

→ 合憲としている

在監者(刑事施設被収容者)の人権
  • 在檻者にも原則として、「新聞紙、図書等の閲覧の自由」が保障される(最大判昭58.6.22)

✗ 憲法上保障されるべきではないとするのが判例である

私人間の人権保障

憲法19条、21条、23条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定

→ 「専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものではない」(最大判昭49.7.19)

→ 「私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」「一定の限界を超える場合にのみ、法がこれに介入しその間の調整をはかる」(最大判昭48.12.12)

→「このような場合に限り憲法の基本権保障規定の適用ないしは類推適用を認めるべきであるとする見解もまた、採用することはできない」(最大判昭48.12.12)

→ 間接適用説

× 基本的人権のうち重要なものは、・・、一定の範囲において、国民相互の法律関係に直接の意味を有する

✗ 私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが

雇入れ

「特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない

→ 「労働基準法3条は労働者の信条によつて賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であつて、雇入れそのものを制約する規定ではない」(最大判昭48.12.12)

→ 企業は「いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて・・・原則として自由に決定することができるのであって、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」(最大判昭48.12.12)

× いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いがなされてもこれを当然に違法とすることができない

労働関係

憲法14条1項の効力が労働関係に「直接」及ぶとはしていない

→ 「会社の企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由」が認められない場合において

→ 「会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である」(最大判昭56.3.24)

私立学校の学生の政治活動を理由に退学

→ 「憲法19条、21条、23条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、・・・私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものではない

→ 「社会通念上合理性を欠くものであるとはいいがたく、・・・、本件退学処分は、懲戒権者に認められた裁量権の範囲内にあるものとして、その効力を是認すべきである」(最大判昭47.7.19)

自衛隊基地建設

「実質的にみて公権力の発動たる行為となんら変わりがないといえるような特段の事情のない限り、憲法9条の直接適用を受けず、私人間の利害関係の公平な調整を目的とする私法の適用を受けるにすぎない」(最判平元.6.20)

幸福追求権

憲法13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

  • 個人の尊重原理に基づく幸福追求権は、憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利

→ 判例も、幸福追求権の具体的権利性を肯定している(最大判昭44.12.24)

✗ 判例は立法による具体化を必要とするプログラム規定だという立場をとる

  • 個人の人格的生存に必要不可欠な行為を行う自由を一般的に保障するものと解する見解

= 人格的利益説

  • 幸福追求権の保障と人権規定の私人間効力は直接に関連しないし、私人間効力と私法上の人格権も直接には関連しない

  • 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される」(最判平20.3.6)

みだりに容ぼう等を撮影されない自由
  • 「現に犯罪が行われもしくは行われたのち、間がないと認められる場合」であって、「しかも証拠保全の必要性および緊急性」があり、かつ「その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行われる場合」には、警察官の写真撮影は許容される(最大判昭44.12.24)

  • 「警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず三者である個人の容ぼう等が含まれていても、これを許容される場合がありうる」(最大判昭44.12.24)

  • 「速度違反車両の自動撮影を行う本件自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、・・・、憲法13条に違反せず、また、右写真撮影の際、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容ぼうを撮影することになつても、憲法13条、21条に違反しない」(最判昭61.2.14)

指紋

「指紋は、・・・、性質上万人不同性、終生不変性をもつものであり、採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険がある」(最判平7.12.15)

✗ 指紋は、・・それ自体では個人の私生活や人格、思想等個人の内心に関する情報ではないから、プライバシーとして保護されるものではない

前科等に関わる事実を公表されない利益
  • 過去に有罪判決を受けた者は、みだりに右の前科等に関わる事実を公表されないことにつき、法的保護に値する利益を有する

  • 「市区町村長が漫然と弁護士会の紹介に応じ、・・・、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使にあたる」(最判昭56.4.14)

喫煙の自由

「あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」(最大判昭45.9.16)

✗ 喫煙の自由は、あらゆる場所において保障されなければならない

プライバシー権の性質

プライバシー侵害に対し法的な救済が与えられる条件

1.私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること

3.一般の人々にいまだ知られていない事柄であること(東京地判昭39.9.28)

  • 「消極的側面」と「積極的側面」

消極的側面

個人の私的領域に他社を無断で立ち入らせない

自己決定権:個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を公権力の介入・干渉なしに各自が自律的に決定できる自由

前科

  • 前科は「事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的意義が認められるような場合」には、事件当事者の実名を明らかにすることが許されないとはいえない(最判平6.2.8)

犯人情報

「プライバシーの侵害については、その事実が公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するのであるから、・・・、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由に関する諸事情を個別具体的に審理し、これらを比較衡量して判断することが必要である」(最判平15.3.14)

= 「特段の事情がない限り」不法行為が成立するとはいえない

✗ 掲載した場合は、特段の事情がない限り、不法行為が成立する

住基ネット

  • 住基ネットによる本人確認情報のうち、「氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報・・・は、・・・個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない」(最判平20.3.6)

= 秘匿性の高い情報とはいえない

  • 住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、・・・住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる」(最判平20.3.6)

GPS端末を車両に装着する捜査手法

  • 「・・・公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり、公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである」(最大判平29.3.15)

積極的側面

自己に関する情報をコントロールする権利

法の下の平等

14条(法の下の平等、貴族制度の否認、栄典の限界)

14条1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない

14条2項 華族その他の貴族の制度は、これを認めない

14条3項 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

尊属の殺害
  • 「尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的避難を受けて然るべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、あながち不合理であるとはいえない

→ 「刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役のみに限つている点において

→ 「憲法14条1項に違反して無効である」(尊属殺重罰規定違憲判決/最大判昭48.4.4)

  • 刑を加重すること自体は合憲

  • 死刑か無期懲役み限る → 加重の程度が極端すぎるので違憲

一票の格差
  • 形式的に1人1票の原則が貫かれていても、投票価値が平等であるとはいえない

→ 選挙権の平等の観念:「1人1票の原則」+「投票価値の平等」(最大判昭51.4.14)

  • 投票価値の平等も憲法上の要請である(最大判昭51.4.14)

  • 投票価値の平等は、「他の政策目的との関連で調和的に実現されるべきもの」(最大判昭51.4.14)

比例代表選挙と小選挙区選挙とに重複して立候補

→ 「候補者届出政党の要件と衆議院名簿届出政党等の要件の両方を充足する政党等に所属する者に限定されていること」

→ 「相応の合理性が認められる」(最大判平11.11.10)

= 小選挙区比例代表に重複立候補できるのは、一定の要件を満たした政党等に所属する者に限定しても憲法違反ではない

  • 人口数と定数との比率の平等を「最も重要かつ基本的な基準」+人口比以外の要素の役割を大きく認め、立法府の裁量を広く認めている

✗ 議員1人当たりの人口が平等に保たれることが重視されるべきであり、国会がそれ以外の要素を考慮することは許されない

  • 合理的是正期間を経過していなければ定数配分規定は合憲である

→ 事情判決の法理最大判昭51.4.14)を持ち出すまでもなく、選挙は有効

  • 「選挙区割及び議員定数の配分は、・・・、一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ、その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、右配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである」(最大判昭51.4.14)

  • 憲法違反の状態にあると判断した投票価値の不均衡を是正しないまま衆議院が解散された例がある

✗ 不均衡を是正しないまま衆議院が解散された例はない

参議院議員

参議院議員都道府県代表としての地位を付与したとまでは述べられていない(最大判昭58.4.27)

✗ 参議院議員都道府県代表をしての地位を付与したものであるから

地方公共団体の議員の定数配分

→ 「都道府県議会の議院の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な要素とし、各選挙人の投票価値が平等であることを強く要求しているものと解される」(最判平元12.18)

嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1にする民法の規定

法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、・・・子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されているものということができる」

「遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたというべきである」

→ 法律婚の保護という立法目的に照らして、著しく不合理であるとしているわけではない(最大決平25.9.4)

✗ 嫡出ではない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、・・・、法律婚の保護という立法目的に照らすと著しく不合理であり、憲法に違反する

  • 出生届に嫡出子または嫡出でない子の別を記載すべきものとする戸籍法の規定

→ 「嫡出でない子について嫡出子との間で子又はその父母の法的地位の差異がもたらされるとはいえない」

→ 「本件規定は、嫡出でない子について嫡出子との関係で不合理な差別的取扱いを定めたものとはいえず、憲法14条1項に違反するものではない」(最判平25.9.26)

国籍法3条1項違憲判決

判旨

国籍法の規定により、日本人の父から出生後に認知された非嫡出子のみが日本国籍取得について著しい差別的取扱いを受けている

国籍法3条1項(当時)の規定は、合理性を欠いた過剰な要件を課すものとなっており、憲法14条に反する

最大判平20.6.4)

✗ 日本との密接な結びつきの指標として一定の要件を設け、これを満たす場合に限り出生後の国籍取得を認めるとする立法目的には、合理的な根拠がないため不合理な差別に当たる

自由権

思想・良心の自由

19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

  • 憲法19条の「思想・良心」の意味を明示した判例はない

✗ 憲法19条の「思想及び良心の自由」は、・・・、固有の組織と教義体系を持つ思想・世界観のみが保護される。

謝罪広告事件

[争点]

裁判所による謝罪広告の強制は、憲法19条に反しないか?

[判旨]

裁判所が謝罪広告の掲載を命ずることは、単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであれば、思想・良心の自由を侵害することにはならない

「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のもの」であれば、代替執行の手続によってこれを行うことができる(最大決昭44.11.26)

信教の自由

20条1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

20条2項 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

  • 「信仰上の真しな理由から剣道実技に参加することができない学生に対し、代替措置として、・・・、およそ代替措置を採ることが、その方法、態様のいかんを問わず、憲法20条3項に違反するということができない」(最判平8.3.8)

  • 信教の自由を不当に侵害するようなものは、憲法20条1項前段および20条2項に反することがある

✗ すべての宗教に平等に適用される法律は違憲となることはない。

  • 「宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない」(最決平8.1.30)

  • 宗教上の感情を非侵害利益として直ちに損害賠償を請求し、又は差止めを請求するなどの法的救済を求めることができるとするならば、かえつて相手方の信教の自由を妨げる結果となるに至ることは、見易いところである」として、損害賠償や差止めなどの法的救済を否定している最大判昭63.6.1)

✗ かかる宗教上の感情を被侵害利益として損害賠償や差止めを請求するなど、法的救済を求めることができる

  • 「神社が・・・玉串料を奉納することは、・・・、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとまでは到底いうことができず、一般人が本件の玉串料等の奉納を社会的儀礼の一つにすぎないと評価しているとは考え難いところである」(最大判平9.4.2)

✗ 慣習化した社会的儀礼であると見ることができるので、当然に憲法に違反するとはいえない

玉串料を奉納 = 違法な公金支出】

  • 「宗教的活動とは、・・・、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為をいうものと解すべきである」(最大判昭52.7.13)

✗ 憲法が国およびその機関に対し禁ずる宗教的活動とは、・・・、あるいは宗教と過度のかかわり合いをもつ行為のいずれかをいう

  • 憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」とは、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織ないし団体のすべてを意味するものではなく、・・・特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指す」(最判平5.2.16)

✗ 宗教活動を本来の目的としない組織はこれに該当しない

表現の自由

憲法21条

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

報道の自由

事実の「報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにある」としたうえで、「このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない」(最大決昭44.11.26)

取材の自由

「報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない」(最大決昭44.11.26)

✗ 取材の自由については、憲法21条の保護のもとにある

「新聞記者に取材源につき証言拒絶権を認めるか否かは立法政策上考慮の余地のある問題であり・・・・新聞記者に右規定を類推適用することのできないことはいうまでもない」(最大判昭27.8.6)

= 新聞記者が証言を拒絶することも認めるかどうかは要検討 → 刑法では証言拒絶権があるとしていない → 列挙している医師と比較して新聞記者に適用することはできない

✗ 証言拒絶の権利は、新聞記者に対しても認められる

→ 「報道機関といえども、・・・、取材の手段、・方法が賄賂、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、・・・違法性を帯びるものといわなければならない」(最決昭53.5.31)

✗ 取材の自由の重要性に鑑み、・・・報道機関が取材目的で公務員に秘密漏示をそそのかしても違法とはいえず、賄賂等の手段を用いても違法性が阻却される

判旨

法定でメモを取る自由は、21条の精神に照らして、尊重に値し、故なく妨げられてはならない

しかし、筆記行為の自由は21条1項の規定によって直接保障されている表現の自由そのものとは異なる制約であるから、その制限または禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではない

「筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない」

× 十分尊重に値する

  • 司法記者クラブ所属の報道機関の記者が法廷でメモをとること

憲法14条1項の規定は、各人に対して絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であつて、・・・、その区別が合理性を有する限り」14条1項に違反するものではないとしたうえで、

「司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ法廷においてメモを取ることを許可することも、合理性を欠く措置ということはできない」(最大判平元.3.8)

  • 情報を摂取する自由

情報を摂取する自由は、「21条1項の趣旨等(表現の自由を保障)から、その派生原理として当然導かれるとしている」(最大判平元.3.8)

  • 筆記行為の自由

筆記行為の自由は、「21条1項で直接保障される表現の自由そのものとは異なるため、厳格な審査基準は要求されていない」としている(最大判平元.3.8)

  • 傍聴人のメモ行為

メモ行為については、「傍聴人の自由に任せることが21条1項の精神に合致する」としている(最大判平元.3.8)

  • 表現の内容を理由とした規制であっても高い価値の表現でないことを理由に通常の内容規制よりも緩やかに審査され、規制が許されるべきだとする場合がある

例)営利を目的とした表現や、人種的憎悪をあおる表現など

  • 公共の福祉

憲法21条1項にいう表現の自由といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがある」(最判平5.3.16)

  • デモ行為禁止の条例を定めること

「公衆の集団示威行為を事前に抑制することは、憲法21条の趣旨に反して許されない」

「しかし、・・・、または公共の福祉が著しく侵されることを防止するため、特定の場所または方法につき、合理的かつ明確な基準のもとに、あらかじめ許可を受けしめ、または届出をなさしめて、このような場合にはこれを禁止することができる旨の規定を条例に設けても違憲ではない」(最大判昭29.11.24)

  • 検閲

憲法21条2項

検閲は、これをしてはならない

→「公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない」(最大判昭59.12.12)

最高裁判所はこれを一切の例外を許さない絶対的禁止とする立場を明らかにしている

「『検閲』とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、・・・、発表前にその内容を審査した上、不適当と認められる者の発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」(最大判昭59.12.12)

→ 「裁判所が表現物の事前差止めの仮処分を行うことは「検閲」には当たらない」としている(最大判昭61.6.11)

「その表現の内容が真実でなく、又それが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る」おそれがあるときは、例外的に事前差止めが許される最大判昭61.6.11)

外国から輸入しようとした出版物にわいせつな表現が含まれている場合

→ 税関が輸入禁制品として没収するのは合憲、事前規制そのものではない(最大判昭59.12.12)

教科書検定

→ 検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものであるとして、合憲としている(最判平5.3.16)

→ 教科書検定は、「一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず、憲法21条2項前段の規定に違反するものではない」としている(最判平5.3.16)

→ 「教科書という特殊な形態において発行を禁ずるものにすぎないことなどを考慮すると、本件検定による表現の自由の制限は、合理的でやむを得ない限度のものというべきであって、憲法21条1項の規定に違反するものではない」(最判平5.3.16)

表現の自由 = 表現の内容規制 → ある表現が伝達しようとするメッセージを理由とした規制

表現内容中立規制 = 表現が伝達しようとするメッセージの内容には直接関係なく行われる規制である

例)学校近くでの騒音の制限、一定の選挙運動の制限

表現行為を規制する刑罰法規の法文が漠然不明確であったり、過度に広汎であったりするときに、そうした文言の射程を限定的に解釈し合憲とすることが許される場合がある最大判昭50.9.10、最大判平19.9.18)

学問の自由

憲法23条

1項 学問の自由は、これを保障する。

制度的保障

憲法23条は学問の自由を制度的に強化する「制度的保障」であるとする見解が有力である

✗ 大学に対して、固有権としての自治権を保障したものであるとする

  • 学問研究を使命とする人や施設による研究は、真理探求のためのものであるとの推定が働くと、学説上考えられてきた

  • 罰則によって特定の種類の研究活動を規制

ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」 → クローン人間等の産生を罰則によって禁止している

✗ 特定の種類の研究活動を規制することまではしていない

大学
  • 「大学の学生が学問の自由を享有し、また大学当局の自治的管理による施設を利用できるのは、大学の本質に基づき、大学の教授その他の研究者の有する特別な学問の自由と自治の効果としてである」(最大判昭38.5.22)

享有・・・権利・能力など無形のものを)生まれながらに身につけ持っていること。

学生の集会

実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない

教科書の検定制度
  • 教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎない

→ 「学問の自由を保障した憲法23条の規定に違反しないことは・・・明らかである」(最判平5.3.16)

居住・移転(経済的自由)

職業選択の自由

憲法22条

1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

営業の自由
  • 大規模店舗の都道府県の勧告

→ 「営業の自由」が制限される

✗ 「営業の自由」を制限しているとはいえない

→ 合格していないと適法に営業できない = 「営業の自由」を制限しているといえる

✗ 営業の自由を制限しているとはいえない

→ 「営業の自由」を制限しているといえる

→ 「租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家財政目的のために職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない」(最判平4.12.15)

  • 公衆浴場に許可制における距離制限がとられること

→ 法的拘束力をもつものとして、業者の「営業の自由」を制限しているといえる

→ 「公衆浴場業者が経営の困難から廃業や転業をすることを防止し、・・・、国民の保健福祉を維持することは、まさに公共の福祉に適合する」(最判平元.1.20)

  • 医薬品の供給の資格制

→ 違憲とした判例はない(最大判昭50.4.30)

✗ 医薬品の供給を資格制にすることについては、必要かつ合理的な措置ではないとして、違憲判決がでている

→ 登記を独占業務としていることについて

→ 公共の福祉に合致した合理的なものであるとして、合憲最判平12.2.8)

  • 小売市場の開設の都道府県知事の許可

→ 合憲(最大判昭47.12.22)

財産権

憲法29条(財産権の保障)

1項 財産権は、これを侵してはならない

3項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる

・「災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要からくることであつて、ため池の堤とうを使用する財産権上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない責任を負う」(奈良県ため池条例事件/最大判昭38.6.26)

  • 「ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていない」(奈良県ため池条例事件/最大判昭38.6.26)

  • 憲法民法を保障する財産権の行使の埒外(らちがい)にあるものというべく、従つて、これらの行為を条例をもつて禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない」(奈良県ため池条例事件/最大判昭38.6.26)

私有財産

私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる

人身の自由

憲法31条(法定手続の保障)

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない

適正手続の保障

  • 地方自治法14条5項のように限定された刑罰の範囲内で条例に罰則の定めを授権しても憲法31条に違反しない」(最大判昭37.5.30)

× 条例によって罰則を定めることは許されていない

罪刑法定主義

刑罰を科すまでの手続だけでなく、実体も法律できめておかなければならない

× 日本国憲法は別に罪刑法定主義の条文をもっているので、

三者の所有物の没収

「第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならない」(最大判昭37.11.28)

「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である」(最大判昭37.11.28)

× 没収されたことを理由に、手続の違法性を主張することはできない

行政手続

憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない

教科書検定

行政処分については、憲法31条による法定手続の保障が及ぶと解すべき場合があるにしても、それぞれの行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず行政処分の相手方に告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を必要とするものではない」

→ 「本件検定による制約は、思想の自由市場への登場という表現の自由の本質的な部分に及ぶものではなく、また、教育の中立・公正、一定水準の確保等の高度の公益目的のために行われるものである」

→ 教科書検定が「憲法31条の法意に反するということはできない」(最判平5.3.16)

逮捕

憲法33条

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

  • 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない

憲法35条

1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

  • 何人も、その住居、書類および所持品について、侵入、捜索および押収を受けることのない権利は、33条の場合(逮捕される場合)を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない

✗ いかなる場合においても、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない

憲法35条は、『住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利』を規定しているところ、この規定の保障対象には、『住居、書類及び所持品』に限らずこれらに準ずる私的領域に『侵入』されることのない権利が含まれる」(最大判平29.3.15)

抑留または拘禁

憲法34条

1項 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。

「単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである」(最大判平11.3.24)

憲法34条

1項(後段) 又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

公務員による拷問

憲法36条

1項 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる

公務員による拷問および残虐な刑罰の禁止は、「公共の福祉」を理由とする例外を許容しない

刑事事件

憲法37条

1項 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する

憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、・・・、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障が明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許されず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である」(最大判昭47.12.20)

2項 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する

不利益供述の禁止

憲法38条

1項 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

憲法38条1項の法意が、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解すべきことは、当裁判所大法廷の判例・・・とするところであるが、右規定による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。」としている(最大判昭47.11.22)

追徴税の併科

憲法39条

何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない

「追徴税のようあ性質にかんがみれば、憲法39条の規定は刑罰たる罰金と追徴税とを併科することを禁止する趣旨を含むものでない」(最判昭33.4.30)

2項 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する

強制、拷問もしくは脅迫による自白または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白 → これを証拠とすることができない

奴隷拘束からの自由

憲法18条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

→ 「公共の福祉」を理由とする例外は許容されていない

  • 「貨物の密輸出で有罪になった被告人」

→ 「被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である」

× 被告人が、手続的保障がないまま、手続の違憲性を主張することはできない

受益権

請願権

憲法16条

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

「請願権」は、憲法上、明文で認められている権利である

公務員の不法行為

憲法17条

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

✗ 「補償」を求めることができる

無罪の裁判

憲法40条

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

参政権

憲法15条

4項後段 選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない

1項 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

「国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである」(最大判平17.9.14)

「国民の選挙権の制限又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきである。

→ 「そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り、・・・やむを得ない事由があるとはいえず、このような事由なしに国民の選挙権の行使を制限することは、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書きに違反するといわざるを得ない」

→ 「立法の不作為によって国民が選挙権を行使することができない場合についても同様である」(最大判平17.9.14)

立候補の自由

「立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持するうえで、きわめて重要である」

「殊に、公職選挙における立候補の自由は、憲法15条1項の趣旨に照らし、基本的人権の一つとして、憲法の保障する重要な権利であるから、これに対する制約は、特に慎重でなければならない」(最大判昭43.12.4)

社会権

生存権

憲法25条

1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

  • 直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない(最大判昭42.5.24)

  • 25条「により直接に個々の国民は、国家に対して具体的、現実的な権利を有するものではない。社会的立法及び社会的施設の創造拡充に従って、初めて個々の国民の具体的、現実的な生活権は設定充実せられてゆくのである」(最大判昭23.9.29)

  • 「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法に趣旨・目的に判旨、法律によつて与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない

  • 憲法25条1項「にいう『健康で文化的な最低限度の生活』なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であつて、・・・、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するにあたつては、国の財政事情を無視することができず、また多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門的考察とそれに基づく政策的判断を必要とする」として、「憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられている」(最大判昭57.7.7)

教育を受ける権利

旭川学テ事件

【争点】憲法上、普通教育機関において教師には教授の自由が保障されるか?

【判旨】

  • 「普通教育においては、子どもの側に学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があること等に思いをいたすときは、普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されない」(最大判昭51.5.21)

✗ 大学における教授の自由と同じように、完全な教授の自由が認められる

憲法26条

1項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

  • 「みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる」(最大判昭51.5.21)

  • 「国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、しうる者として、憲法上は、あるいは子ども自身の利益の擁護のため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてこれを決定する権能を有するものと解さざるをえない」(最大判昭51.5.21)

義務教育の無償

憲法26条

2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

  • 「義務教育は、これを無償とする。」とあり、これは授業料不徴収という意味であって、仮に教科書代金を徴収しても、憲法に違反しない(最大判昭39.2.26)
少年院に送致した国民
  • 少年を、少年院に送致した結果、高等学校教育を受ける機会を失わせたとしても、差別的待遇を禁止した教育基本法3条1項に違反せず、したがって、憲法26条1項にも違反しない最大判昭32.4.5)
教科書検定
  • 「教育内容の正確、中立、公正で全国的一定水準を確保するために行われるものであり、憲法26条に違反しない」(最判平5.3.16)

労働基本権

憲法28条

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する

労働基本権と公務員

「労働基本権は、・・・勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであつて、・・・おのずから勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からする制約を免れないものであり、・・・勤労者たる地位にあるすべての者を包摂した国民全体の共同の利益を指すものということができよう」(最大判昭48.4.25)

  • 正当な争議行為には刑罰が科せられない

刑事免責(労働基本権の自由権的側面)は具体的権利であり、国の措置によってはじめて具体的権利が生じるわけではない

  • 統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、「勧告または説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合を統制違反者として処分するがごときは、組合の統制権の限界を超えるものとして、違法といわなければならない」(最大判昭43.12.4)
臨時組合費の納入について

1.労働者の権利利益に直接関係する立法や行政措置を促進するための活動のごときは、政治活動としての一面をもち、そのかぎりにおいて組合員の政治的思想、見解、判断等としての一関係ではありえないけれども、それとの関連性は稀薄であり、むしろ組合員個人の政治的立場の相違を超えて労働組合本来の目的を達成するための広い意味における経済的活動ないしはこれに付随する活動であるとみられるものであつて、このような活動について組合員の協力を要求しても、その政治的自由に対する制約の程度は極めて軽微なものということができる。それゆえ、このような活動については、労働組合の自主的な政策決定を優先させ、組合員の費用負担を含む協力義務を肯定すべきである」(最判昭50.11.28)

→ 組合員に納入義務あり

2.いわゆる安保反対闘争実施の活動費用

→ 組合員に納入義務なし

3.いわゆる安保反対闘争により不利益処分を受けた組合員を救援する費用

→ 組合員に納入義務あり (国労広島地本事件/最判昭50.11.28)