地方自治法の意義
憲法における地方自治の基本ルール
地方公共団体の組織および運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める
<地方自治の本旨とは>
国から独立した存在として、国の関与を受けず事務を処理する:団体自治
住民の意思に基づいて、地方政治を行う:住民自治
地方自治法の目的
1.地方公共団体の区分、地方公共団体の組織および運営に関する事項の大綱を定める
2.国と地方公共団体との間の基本的関係を確立する
→ 地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図り、地方公共団体の健全な発達を保障する
地方公共団体の種類
普通地方公共団体
特別地方公共団体
地方公共団体の事務
自治事務
法定受託事務以外の事務
例)飲食店の営業許可
控除方式で定義
× 例示列挙
法定受託事務
地方公共団体の組織
組織
1.事務機関としての議会
地方自治に必要な事項を決定する
2.執行機関としての長・委員会
自らの判断と責任において執行する機関
議会
議会の設置
町村においては議会のかわりに町村総会を置くことができます
議員の要件
議会の組織
条例で委員会制度を導入して、議決事項のうち特に専門性を有するものについては、少人数の議員で構成される委員会で事前に協議する
議会の運営
定例会
臨時会
議会の権限
執行機関
都道府県 → 知事
市町村 → 市町村長
→ 地方公共団体の長として様々な権限を与えています
独自の執行権を有し、担任する事務については、地方公共団体としての意思決定をみずから行い、外部に表示することのできる機関
長の要件
長の補助機関
長の権限
行政委員会
長と議会の関係
長の再議請求権
不信任議決と解散
地方公共団体の長の不信任の議決 → 解散後初めて召集された議会において再び不信任の議決
→ 普通地方公共団体の長は、議長から通知があった日においてその職を失う
× 長は再度議会を解散することができる
議会において議決すべき事件を議決しないとき
→ 地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる
長の専決処分
住民の権利
選挙権・被選挙権
- 住所
選挙権の要件としての住所は、その人の生活にもつとも関係の深い一般的生活、全生活の中心をもつてその者の住所と解すべき
都市公園内に不法に設置されたテント
→ 同テントの所在地に住所を有するものとはいえない
- 法人も市町村の区域内に住所を有するのであれば、住民として扱われる
× 法人は住民として扱われることはない
- 日本国民たる普通地方公共団体の住民
→ 選挙に参与する権利を有する
× 日本国籍の有無にかかわらず→日本国籍を有しない住民は、選挙権を有しない
- 日本国民で年齢満25歳以上のものは、・・・、市町村長の被選挙権を有する
→ 当該普通地方公共団体に関する選挙権を有すること、当該区域内に言って期間住所を有することを要件としていない
直接請求
地方政治では、国政と異なり一定以上の住民が署名を集めて条例の制定を求めたり、長の解職を求めたりすることができます
条例の制定改廃請求
- 日本国民たる普通地方公共団体の住民は、条例の制定・改廃を請求する権利を有する
× 日本国籍を有しない者であっても
× 条例の制定に関する議決を阻止すること
→ 条例の制定改廃請求の対象とはならない
× 地方公共団体のすべての条例について、制定または改廃を請求する権利を有する
→ 地方税の賦課徴収ならびに分担金、使用料および手数料の徴収に関するものを除く
- 条例の制定・改廃請求 → 適法な請求を受理した長は、これを議会に付議しなければならず、不義を拒否することは認められていない
住民監査請求
住民監査請求とは
私たち住民が納めている税金は、適切に使われるべきです。そこで、住民は地方公共団体の財務会計上の行為について、違法または不当な点があれば、監査委員に監査を請求することができます
- 普通地方公共団体の住民であれば、1人でもすることができる
× 住民の連署により、これをする必要がある
日本国籍を有する住民にのみ認められている
× 日本国籍を有しない住民も、住民監査請求をする権利を有する
事務監査請求との違い
住民訴訟
× 普通地方公共団体の住民ではない者であっても
- 違法な財務会計行為が行われた時点において住民で会った必要はない
× 違法な会計行為が行われた時点において当該地方公共団体の住民で会ったことが必要となる
- 住民訴訟を提起しようとするものは、住民監査請求を行う必要がある
× 自ら別個に住民監査請求をする必要はない
- 原告が口頭弁論終結時までに他に転出 → その訴えは不適法となる
× 他に転出しても、当該訴訟が不適法となることはない
- 監査委員の監査の結果や勧告に不服があるとき
→ 住民訴訟を提起することができる
- 監査委員が不適法として却下
→ 適法な住民監査請求を経たものとして、直ちに住民訴訟を提起するっことができる
× A市在住の日本国籍を有する住民XがA市でもB市でも住民訴訟を提起できる
- 住民訴訟を提起した者が → 係属中に死亡 → その訴訟を承継するに由なく、当然に終了する
× 当該地方公共団体の住民である場合に限り、訴訟を承継できる
× 特定の市立保育所の廃止の条例の制定行為を住民訴訟によって差止めを求める
3号訴訟
当該執行機関または職員に対する怠る事実の違法確認の請求
4号訴訟
職員等に損害賠償または不当利得返還の請求をすることを普通地方公共団体の執行機関または職員に対して求める請求
× 公金の支出を行うことを当該普通地方公共団体の長に対して義務付ける請求
条例・規則
条例
国会で法律がつくられるのと同様、地方議会では条例が制定されます
× 刑罰の種類は、懲役や禁固は、設けることができない
× 過料を科す旨の規定は、設けることができない
→ 個別の法律の委任を要しない
× 個別の法律の委任を必要とする
- 条例の送付を受けた → 普通地方公共団体の長が公布する
× 議長から送付を受けた長が公報などにより告示する
規則
- 規則で刑罰を規定することはできない
× 条例による委任のある場合には、規則で刑罰を規定することができる
条例は地方議会の議決で制定されますが、規則は地方公共団体の長が単独で制定することができます
公の施設
公の施設とは
公の施設とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設のことです
- 公の施設とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供する施設を指し、法令に特別の定めのあるものを除いて、その設置、管理については、かならず条例の根拠を必要とする
× 長の定める規則によらなければならない
- 管理を指定管理者に行わせる
→ 指定管理者の指定の手続等の必要な事項を条例で定めなければならない
→ 議会の議決を経なければならない
× 議会の議決に加えて総務大臣の承認が必要
- 法人の指定 → 条例の定める「指定の手続」によって指定する
× 条例自体によって指定されなければならない
地方公共団体が指定する法人に、その管理する公の施設に係るその者の収入として収受させることができる
公の施設の利用料金は指定管理者が定める
× 指定管理者が定めることはできない
- 住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない
→ 正当な理由があれば、利用を拒むことができる
→ 住民に準ずる地位のある者にも適用される
(例外)
合理的な理由があれば、別荘の給水契約者とそれ以外の給水契約者の基本料金に差をつける条例を定めることも許される
普通地方公共団体の長以外の機関がした公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求
→ 当該普通地方公共団体の長に対してする
× 総務大臣に対してするものとされている
他の地方公共団体・住民との関係
公の施設は、例えばA市の区域内でつくられ、A市の住民が利用することが想定されていますが、B市の住民がまったく利用できないわけではありません
公の施設の廃止・長期の独占的利用
国の関与
財務
地方公共団体の財務
- 地方債を起こす場合
× 起債前に財務大臣の許可
- 分担金、使用料、加入金および手数料
→ 条例で定める
- 国民健康保険の保険料
→ 租税法律主義 → 賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するもの
- 地方自治法では、契約の締結の手続が定められている
→ 契約の締結に関して特別な手続は規定されていない
→ 政令で定める場合
× 条例でこれを定める
関与
関与
→ 法律またはこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国または都道府県の関与を受け、または要することとされることはない
→ 関与は必要な最小限のものとする → 普通地方公共団体の自主性および自律性に配慮
→ 法定受託義務にも当てはまる
- 各大臣
1.都道府県の法定受託義務の処理が法令の規定に違反している
→ 法定受託事務の処理について違反の是正または改善のための必要な措置を講ずべきことを当該都道府県に対し勧告することができる
→ 都道府県知事がその期限までに当該事項を行わないとき → 各大臣は、高等裁判所に対し、訴えをもって、、、
- 都道府県知事
1.自治事務の処理について違反の是正または改善のための必要な措置を講ずべきことを当該市町村に対し勧告することができる
2.都道府県知事の権限に属する事務の一部
→ 条例の定めるところにより → 市町村が処理
3.法定受託義務に係る都道府県知事の処分およびその不作為についての審査請求
→ 当該処分に係る事務を規定する法律またはこれに基づく政令を所管する各大臣に対してするものとする
✗ すべて総務大臣
係争処理手続
国地方係争処理委員会・自治紛争処理委員
国地方係争処理委員会
国と地方公共団体との係争
法定受託義務に関する国の関与が違法であると認めるとき
→ 国地方係争処理委員会 → 国の行政庁に対して → 必要な措置を講ずべきことを勧告する
- 市長が自治事務に関する国の関与が不服
→ 高等裁判所に対し → 訴訟を提起することができる
自治紛争処理委員
都道府県と市町村との紛争
非常勤とする
✗ 必ず常勤の