【民法】契約各論
8.契約各論
8.1.贈与契約
8.2.売買契約
8.3.賃貸借
8.4.使用貸借・消費貸借
8.5.請負契約
8.6.委任契約
8.7.寄託契約
8.8.組合契約
8.9.和解
8.契約各論
8.1.贈与契約
8.1.1.贈与契約とは
(書面によらない贈与の解除)
550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
「贈与の意思表示自体が書面によつていることを必要としないことはもちろん、書面が贈与の当事者間でさくせいされたこと、又は書面に無償の趣旨の文言が記載されていることも必要とせず、書面に贈与がされてことを確実に看取しうる程度の記載があれば足りるものと解すべきである。」としている。
551条(贈与者の引渡義務等)
1項 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
2項 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
「負担付贈与において、受贈者が、その負担である義務の履行を怠るときは、・・・贈与者は贈与契約の解除をなしうる。」としている。
552条(定期贈与)
定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
554条(死因贈与)
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与(死因贈与)については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
8.1.2.書面によらない贈与の解除
8.2.売買契約
8.2.1.売買契約とは
558条(売買契約に関する費用)
売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
8.2.2.手付
「売買の当事者間に手附が授受された場合において、特別の意思表示がない限り、民法557条の定めている効力、すなわちいわゆる解約手附としての効力を有するものと認むべきである。」としている。
557条(手付)
1項 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。
1項ただし書 ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
→ 履行に既に着手したか否かにかかわらず、その相手方が契約の履行に着手していなければ、契約の解除をすることができる。
2項 手付金のほかに損害賠償を請求することはできない。
560条(権利移転の対抗要件に係る売主の義務)
売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
561条(他人の権利の売買における売主の義務)
他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
562条(買主の追完請求権)
1項 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2項 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、履行の追完の請求をすることができない。
563条(買主の代金減額請求権)
1項 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
→ この場合、目的物の種類または品質に関する担保責任の期間制限の規定(566条)は適用されず、債権の消滅時効に関する一般原則(166条)が適用される
→ 権利を行使することを知った日から5年間、または権利を行使することができる時から10年間は代金減額請求をすることができる。
2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
→ 履行の追完が合理的に期待できるときは、履行の追完の催告をすることなく代金の減額を請求することはできない。
3項 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、代金の減額の請求をすることができない。
564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものである場合においても、売主の債務不履行に基づく買主の損害賠償請求は妨げられない。
566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
✗ 不適合を知った時から1年以内に、Aに対して請求権を行使しなければならない。
567条(目的物の滅失等についての危険の移転)
1項 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
2項 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。
573条(代金の支払期限)
売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。
575条(果実の帰属及び代金の利息の支払)
1項 まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2項 買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。
576条(権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)
売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
「他人物売買において、本人が目的物を譲渡する意思がなく、売主が当該目的物を買主に移転できない場合でも、売買契約自体は有効である。」
「他人物売買であっても、本人が追認すれば、相手方は116条(無権代理行為の追認)の類推適用により、契約時にさかのぼって権利を取得することができる。」
「他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、・・・契約が解除された場合」についても、「目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負う。」としている。
579条(買戻しの特約)
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。
580条(買戻しの期間)
買戻しの期間は、10年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、10年とする。
3項 買戻しについて期間を定めなかったときは、5年以内に買戻しをしなければならない。
8.2.3.契約不適合責任(担保責任)
8.2.4.契約不適合責任が追及できる場合
8.2.5.買主の権利の期間制限(566条)
8.3.賃貸借
8.3.1.賃貸借とは
604条(賃貸借の存続期間)
賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。
8.3.2.賃貸人・賃借人の義務
賃貸人の義務
2.修繕義務
605条(不動産賃貸借の対抗力)
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
✗ 登記しても、その後その不動産について物権を取得した者には対抗することができない。
605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転)
不動産について賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
605条の3(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。
3項 賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4項 賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、費用の償還に係る債務及び敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
✗ 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。
605条の4(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等) 不動産の賃借人は、不動産賃貸借の対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
606条(賃貸人による修繕等) 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
607条(賃借人による修繕)
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
1号 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
608条(賃借人による費用の償還請求)
1項 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2項 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
事例1)賃借人は、有益費については直ちにAに対して償還請求することができない。
事例2)賃借人が有益費を支出して増築部分を付加して同建物と一体とし、増築部分が火災
→ 増築部分が失われたことから、その増築部分につき有益費の償還請求をすることはできない。
612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
1項 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
「賃貸人は、いったん与えた承諾を一方的に撤回することはできない。」としている。
事例)「賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情があるといえるため、賃貸人は賃貸借契約の解除をすることはできない。」としている。
事例)賃借地上にある建物の売買契約が締結された場合置いては、特別の事情のない限り、その売主は買主に対し建物の所有権とともにその敷地の賃借権をも譲渡したものと解すべきであり、・・・特約または慣行がなくても、特別の事情のない限り、建物の売主は買主に対し敷地の賃借権譲渡につき賃貸人の承諾を得る義務を負う。 としている。
2項 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
→ 賃貸人が解除しなければ、賃貸借契約は終了しない。
「賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益を為さしめた場合においても、賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては、612条の解除権は発生しないものと解するを相当とする。」としている。
613条(転貸の効果)
1項 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
→ 賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することができる。
3項 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。
3項ただし書 ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
614条(賃料の支払時期)
賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
→ 「翌月分」の賃料を支払うわけではない。
「土地または建物の賃借人は、賃借物に対する権利に基づき事故に対して明渡しを請求することができる第三者からその明渡しを求められた場合には、それ以後、賃料の支払を拒絶することができる。」としている。
「土地賃貸人と賃借人との間において土地賃貸借契約を合意解除しても、特別の事情のないかぎり、土地賃貸人は解除をもって賃借人の所有する地上建物の賃借人に対抗することができない。」としている。
「賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の不履行により終了する。」としている。
賃貸人が賃借人の賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、「賃貸人は賃借人に対して催告するをもつて足り、さらに転借人に対してその支払いの機会を与えなければならないというものではない。」としている。
「転貸を承諾しない賃貸人は、賃貸借契約を解除しなくても、転借人に対して賃借物の明渡を求めることができる。」としている。
617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
1号 土地の賃貸借 1年
2号 建物の賃貸借 3箇月
3号 動産及び貸席の賃貸借 1日
「建物買取請求権を行使した後は、買取代金の支払のあるまで右建物の引渡を拒むことができるけれども、右建物の占有によりその敷地をを専有する。」としている。
賃借人の義務
3.目的物返還義務と原状回復義務
※賃借物を受け取った後に生じた損傷があれば、それを元に戻す義務を負う
- 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨通知したにもかかわわず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしない
→ 賃借人は、その修繕をすることができる
- 賃借人が賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合
→ 賃貸借が終了 → その損傷を現状に復する義務を負う
→ 通常の使用および収益によって生じた賃借物の損耗ならびに賃借物の経年劣化を除く
621条(賃借人の原状回復義務)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
✗ 通常の使用および収益によって生じた賃借物の損耗についても、それを原状に復する義務を負う。
622条の2
1項 賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
1号 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
2号 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
「賃貸借存続中に目的不動産の所有権が移転し、新所有者が賃貸人の地位を承継した場合には、旧賃貸人に差し入れられていた敷金は、未払賃料があればこれに当然充当され、残額があればそれについての権利義務が新賃貸人に承継される。」としている。
賃貸人の敷金返還債務と賃借人の家屋明渡債務は、同時履行の間家にはない。
賃借人の建物返還債務は、特別の約定のない限り、敷金返還債務に対して先履行の関係にある。
→ 賃借人は、賃貸人からの建物明渡請求に対して、敷金返還請求権を保全するために同時履行の抗弁権を主張することはできず、留置権を行使することもできない。
2項 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
不動産賃借の物件化
賃貸目的物の新所有者と賃借人との関係
敷金関係
賃借権の譲渡・転貸
- 賃借人が転貸
→ 賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う
※賃貸人は、転借人に直接に賃料の支払を請求することができる
- 当事者が賃貸借の期間を定めなかった
→ いつでも解約の申入れをすることができる
1.土地 → 解約の申入れの日から1年
2.建物 → 解約の申入れの日から3ヵ月
3.動産及び貸席の賃貸借 → 解約の申入れの日から1日を経過
することによって終了する
8.4.使用貸借・消費貸借
587条の2(書面でする消費貸借等)
1項 要物契約としての消費賃借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
2項 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
590条(貸主の引渡義務等)
2項 利息の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。
→ 利息の特約があったとしても、金銭以外の物を消費してしまったときは価額(金銭)を返還すればよい。
591条(返還の時期)
1項 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2項 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
593条(使用貸借)
使用貸借は、当事者の一方《貸主》がある物を引き渡すことを約し、相手方《借主》がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
593条の2 (借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除)
貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
594条(借主による使用及び収益)
借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
595条(借用物の費用の負担)
借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
→ 通常の必要費については貸主に対して召喚を請求することはできない。
2項 特別の必要費は、196条の規定に従い、使用借主は、使用貸主に対してその召喚を請求できる。
→ 賃貸借の場合には、賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
583条(買戻しの実行)
2項ただし書 ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
✗ 使用貸借においては、・・・、有益費については貸主の負担となり、その償還の時期は使用貸借の終了時であり、貸主の請求により裁判所は相当の期限を許与することはできない。
596条(貸主の引渡義務等)
551条の規定は、使用貸借について準用する。
= 使用貸借において、貸主は、使用貸借の目的である物を、使用貸借の目的として特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定される。
597条(期間満了等による使用貸借の終了)
2項 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3項 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
→ 貸主の死亡によっては、その効力を失わない。
622条(使用貸借の規定の準用)
賃貸借の場合には、賃貸借契約は、賃借人の死亡によって終了しない。
599条(借主による収去等)
2項 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
8.5.請負契約
8.5.1.請負契約とは
請負人は、原則として、下請負人に仕事を委託することができる。
「注文者が材料の主要な部分を提供した場合には、完成した物の所有権は、特約のない限り、原始的に注文者に帰属する。」としている。
「建物の材料の主要部分を請負人が提供した場合であっても、注文者が仕事完成前に代金の支払を完了しているときは、建物は工事完成と同時に注文者の所有となる合意があったと推認するのが相当である。」としている。
633条(報酬の支払時期)
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。
→ 請負人の目的物引渡債務と注文者の報酬支払債務が同時履行の関係にある。
634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
1号 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
2号 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
636条(請負人の担保責任の制限)
請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときは、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
※「数量」の不適合については規定されていない。
637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
636条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
8.5.2.請負人の担保責任(契約不適合責任)
8.5.3.請負契約の終了
641条(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
642条(注文者についての破産手続の開始による解除)
注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。
→ 請負人は、仕事を完成した後は、仕事を継続する義務を負っていないことから、その請負人による契約の解除を認める必要がない。
8.6.委任契約
8.6.1.委任契約とは
643条(委任)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
→ 無償委任の場合も有償委任の場合も異ならない。
✗ 自己の事務に対するのと同一の注意をもって処理
644条の2(復受任者の選任等)
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
645条(受任者による報告)
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
646条(受任者による受取物の引渡し等)
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。
648条(受任者の報酬)
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2項 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。
2項ただし書 ただし、期間によって報酬を定めたときは、その期間を経過した後に、請求することができる。
3項 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
1号 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
2号 委任が履行の中途で終了したとき。
→ 既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
648条の2(成果等に対する報酬)
委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
649条(受任者による費用の前払請求)
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
650条(受任者による費用等の償還請求等)
2項 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。
3項 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
→ 準委任契約においても、受任者は、委託事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
656条(準委任)
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
→ 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
8.6.2.委任契約の終了
651条(委任の解除)
1項 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2項 委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
1号 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
2号 委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したとき。
(委任の解除の効力)
652条 委任の解除をした場合は、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
1号 委任者又は受任者の死亡
2号 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
3号 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
8.7.寄託契約
寄託とは、当事者の一方が相手方のために者の保管をすることを約束して、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる契約。
寄託者(きたくしゃ)・・・物の保管を依頼する者
受寄者(じゅきしゃ)・・・保管する者
657条の2
1項 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
2項 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。
3項 受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。
658条(寄託物の使用及び第三者による保管)
2項 受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者《再寄託者》に保管させることができない。
659条(無報酬の受寄者の注意義務)
無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
660条(受寄者の通知義務等)
寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
661条(寄託者による損害賠償)
寄託者は、寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。
ただし、
寄託者が過失なくその性質若しくは瑕疵を知らなかったとき、
又は受寄者がこれを知っていたときは、
この限りでない。
662条(寄託者による返還請求等)
当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
663条(寄託物の返還の時期)
1項 当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでもその返還をすることができる。
2項 返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
665条(委任の規定の準用)
受寄者は、保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、寄託者に対し、その費用および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
8.8.組合契約
668条(組合財産の共有)
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。
670条(業務の決定及び執行の方法)
1項 組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。
→ 組合の常務は、各組合員が単独で行うことができる。
2項 組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができる。
「組合規約等で業務執行者の代理権限を制限しても、その制限は前以下つ無過失の第三者に対抗することができない。」としている。
670条の2(組合の代理)
2項 業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができる。
671条(委任の規定の準用)
組合の業務を執行する組合員は、特約がなければ、組合に対して報酬を請求することができない。
676条(組合員の持分の処分及び組合財産の分割)
1項 組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。
2項 組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない。
✗ その持分についての権利を単独で行使することができる。
3項 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。
組合の債務は、組合員全員に含有的に帰属する。
677条の2(組合員の加入)
1項 組合員は、その全員の同意によって、又は組合契約の定めるところにより、新たに組合員を加入させることができる。
2項 前項の規定により組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負わない。
678条(組合員の脱退)
組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、又はある組合員の終身の間組合が存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。
ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することができない。
→ やむを得ない事由がある場合には、組合に不利な時期であっても脱退することができる。
「民法678条は、組合員は、やむを得ない事由がある場合には、組合の存続期間の定めの有無にかかわらず、常に組合から任意に脱退することがでる旨を規定しているものと解されるところ、同条のうち右の旨を規定する部分は、強行規定であり、これに反する組合契約における約定は効力を有しない。」としている。
→ 「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない」旨の特約は無効。
8.9.和解
695条(和解)
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
贈与契約
- 贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し
書面によらない贈与の解除
軽率な贈与を防止するため、書面によらない(口頭で行った)贈与はいつでも解除することができますが、すでに履行の終わった部分については解除できないとされています。
売買契約
売買契約とは
売買契約とは、当事者の一方が財産を相手方に移転することを約束し、それに対して相手方が代金を支払うことを約束する契約です。
手付
1.証約手付
2.解約手付
解約手付による解除
- 相手方が履行に着手していないこと
2.買主が解除する場合は手付を放棄し、売主が解除する場合は手付の倍額を返還すること
売買の当事者間に手附が授受された場合において、特別の意思表示がない限り、民法557条に定めている効力、すなわちいわゆる解約手附としての効力を有するものと認むべきである
解約手付による解除の場合には、手付金のほかに損害賠償を請求することはできない
売主は、買主にに対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う
買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う
他人の権利を売買の目的とした場合
→ 売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う
契約不適合責任
契約不適合責任が追求できる場合
- 不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるとき
→ 買主は、履行の追完の請求をすることができない
- 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない
→ 買主が、相当の期間を定めて履行の追完の催告
→ その期間内に履行の追完がないとき
→ 買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる
- 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない
→ 売主の債務不履行に基づく買主の損害賠償請求は妨げられない ※買主は損害賠償を請求できる
→ 買主は、その不適合を知った時か1年以内にその旨を売主に通知しない
→ 損害賠償請求および契約の解除をすることができない
✗ 1年以内に損害賠償請求しなければならない
賃貸借
賃貸借とは
賃貸人・賃借人の義務
賃貸人の義務
使用貸借・消費貸借
請負契約
請負契約とは
請負契約とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって成立する契約
- 請負人が仕事を完成 → 注文者が報酬を支払う関係
→ 報酬の支払いと仕事の完成は同時履行の関係ではない
※契約の解除などにより仕事が完成しなかったとしても、注文者が利益を受けるときは、請負人はその利益の割合に応じて報酬の請求をすることができます
- 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならない
※受託者が仕事を完了し、委託者に対して目的物を引き渡したときに、委託者は報酬を支払わなければなりません。
委任契約
委任契約とは
委任とは、当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって生じる契約
受任者の義務
委任者の義務
1.報酬支払義務
原則なし
※特約で定めた場合のみあり。
※受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない
2.その他の義務
- 受任者の請求に応じて費用を前払いする義務
委任契約の終了
各当事者による任意解除
各当事者は、いつでも契約を解除できる
※相手方に不利な時期に解除する場合または委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除する場合は、やむを得ない事由がある場合を除き損害賠償が必要。
→ 相手方に不利な時期でも、損害を賠償すれば解除できる
委任特有の終了事由
2.受任者が後見開始の審判を受けた場合
例えば、Aさんが高齢で認知症が進行しており、自身の財産や法的な手続きを管理する能力が低下しています。Aさんは、自分の財産を管理してもらうために、友人のBさんに委任を依頼しました。Bさんは受任者となり、Aさんの財産を管理することを約束しました。
しかし、Aさんの認知症が進行し、法的な後見の必要性が生じたとき、Aさんの家族や関係者が裁判所に後見開始の審判を申し立てます。裁判所はAさんの状況を審査し、後見人を任命するかどうかを決定します。
もし裁判所が後見開始の審判を行い、Aさんに後見人が任命された場合、その後見人がAさんの財産や法的な権利を管理する責任を負います。この時、受任者であるBさんの委任契約は終了し、後見人がAさんの財産を管理する権限が与えられます。後見人がAさんの財産を管理する役割を果たすため、受任者であるBさんの役割は終了することになります。