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【行政法総論】行政法の基本原理・行政組織法・行政活動の種別

行政法全体

1.行政法の基本原理

1.1.法律による行政の原理

1.2.行政法の一般原則

1.3.行政法の適用範囲

2.行政組織法

2.1.行政主体

2.2.行政機関

2.3.行政機関相互の関係

2.4.国の行政組織

2.5.国家公務員

2.6.公物

1.行政法の基本原理

1.1.法律による行政の原理

1.2.行政法の一般原則

「有罪判決を受けた公務員はその時点で失職しているはずであるが、刑事事件で有罪判決を受けたことを隠し、ほぼ27年にわたって郵便局に勤務した者に対して『有罪判決時に失職した』と主張することについて、信義則に反し権利の濫用に当たるものということはできない。」としている。

個室付浴場業の開業を阻止することを主たる目的としてなされた都道府県知事の「児童遊園設置認可処分は行政権の著しい濫用によるものとして違法である。」としている。

1.3.行政法の適用範囲

  • 「現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、・・・、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格的権利)を有する。」としている。

  • 民法177条の適用あり】「滞納処分による差押の関係においても、民法177条の適用があるものと解するのが相当である。」としている。

「国財滞納処分により差押えには、民法対抗要件の規定が適用される」。

  • 民法177条の適用あり】公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、・・・、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」としている。

公営住宅の使用関係については、原則として民法および借地借家法の適用がある」。

普通地方公共団体がその関連団体がその関連団体と契約を結ぶ場合、当該地方公共団体の長が代表して行う契約の締結には民法の規定が類推適用される」。

民法177条

  • 「旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、権力的・公法的行為であり、農地買収処分にあたって誰を「所有者」とみるかについては、民法対抗要件の規定(177条)が適用されない。」としている。

  • 入居者が死亡した場合には、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に継承すると解する余地はないというべきである。」としている。

✗ その同居に相続人がその使用権を当然に承継することが認められる。

  • 「公立病院において行われる診療は、・・・、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきである。」としている。

  • 国の公務員に対する安全配慮義務につき、国の権利義務を早期に決済する必要があるなど主として「行政上便宜を考慮する必要はなく、また、国が義務者であつても、・・・、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間」については、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用されるとしている。

  • 普通地方公共団体が当該普通地方公共団体の関連団体と契約を結ぶ場合、当該地方公共団体の長が代表して行う契約の締結には、民法の双方代理の禁止の規定が類推適用される。」としている。

2.行政組織法

2.1.行政主体

行政庁

行政主体の意思を決定し、これを外部に表示する権限を有する行政機関をいう。

国家行政組織法3条(行政機関の設置、廃止、任務及び所掌事務)

2項 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。

✗ 各省庁は公法人であり、公法上の権利・義務の貴族主体としての役割を担う。

  • 行政機関が行政主体のために行う行為の効果は、その行政主体に帰属する。

✗ 権限行使を担当する公務員に効果が帰属する。

× 行政庁は「独任制」でなければならない。

2.2.行政機関

補助機関
  • 行政庁およびその他の行政機関の職務を補助するために、日常的な事務を遂行する機関

  • 実力行使をしない

例)各省の事務次官・局長、副知事、副市町村長、一般職員など。

執行機関
  • 行政主体の手足として実力を行使する機関

    • 実力行使をする

例)警察官、消防職員、徴税職員、自衛官など。

諮問機関

諮問機関の違憲は行政庁を法的に拘束しない

例)中央教育審議会

参与機関

諮問機関の違憲は行政庁を法的に拘束する

例)司法試験委員会

2.3.行政機関相互の関係

権限の代理(権限の移動なし

法定代理:法律の根拠が必要

例)「県知事が亡くなった場合には副知事が権限を行使する」

権限の委任(権限の移動あり
  • 行政庁が法律上定められた自己の権限の一部をその下級行政庁その他の行政機関(補助機関など)に委任すること。

  • 法令上の根拠が必要。

× 上級行政庁から下級行政庁に対してのみ行うことができる。

× 特に法令に根拠がない場合でも認められる。

  • 権限の所在は、委任した行政庁から受任機関に移転する

  • 「権限の委任によって、権限は委任を受けた行政庁に映ることになるので、国民が処分の取消しの訴えを提起する際の被告も受任長の所属する国または公共団体ということになる。」としている。

  • 上級行政庁は下級行政庁に対して指揮監督権を有する。これには監視権や取消権だけでなく、訓令・通達等を発する権限も含まれる

2.4.国の行政組織

内閣総理大臣

内閣府設置法7条(内閣総理大臣の権限)

内閣総理大臣は、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督する。

内閣府設置法49条(設置)

内閣府には、その外局として、委員会及び庁を置くことができる

内閣法6条

内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する

国の行政機関

国家公務員法3条(人事院

1項 内閣の所轄の下人事院を置く。

× 総務省の外局として人事院が設置されている。

国家行政組織法3条(行政機関の設置、廃止、任務及び所掌事務)

2項 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。

× 別に政令で定めるところによる

  • 法律・・・国会の議決を経て制定される国法の一つ

  • 政令・・・内閣が制定するもので、憲法・法律を実施するために制定されるルール(憲法73条6号)

× 内閣府には外局は置かれない。

国家行政組織法5条(行政機関の長)

1項 各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する。

3項 各省大臣は、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が命ずる。ただし、内閣総理大臣が自ら当たることを妨げない

憲法

72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

国家行政組織法8条(審議会等)

第3条の国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる。

国家行政組織法11条

各省大臣は、主任の行政事務について、法律又は政令の制定、改正又は廃止を必要と認めるときは、案をそなえて、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めなければならない。

国家行政組織法12条

各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。

× 「訓令」または「通達」

国家行政組織法16条(副大臣

1項 各省に副大臣を置く。

× 副大臣を置くことができる。

国家行政組織法18条(事務次官及び庁の次長等)

1項 各省には、事務次官一人を置く。

2項 事務次官は、その省の長である大臣を助け、省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する。

× 人事院会計検査院は、国家行政組織法において、「国の行政機関」として位置づけられ、

警察法38条

1項 都道府県公安委員会は、都道府県知事の所轄の下に置かれる。

✗ 内閣総理大臣は、・・・都道府県公安委員会の運転免許交付事務を指揮監督することができる。

道路交通法84条

1項 自動車の運転免許の交付の権限は、都道府県公安委員会が有する。

2.5.国家公務員

国家公務員法2条(一般職と特別職)

5項 この法律の規定は、この法律の改正法律により、別段の定がなされない限り、特別職に属する職には、これを適用しない

国家賠償法16条(人事院規則及び人事院指令)

人事院は、その所掌事務について、法律を実施するため、又は法律の委任に基づいて、人事院規則を制定し、人事院指令を発し、及び手続を定める。

✗ 事前に閣議を経なければならない。

国家公務員法78条(本人の意に反する降任及び免職の場合)=分限処分

1項 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

✗ 懲戒処分の対象となりうる。

2号 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合

分限処分・・・職員の身分保障を前提としつつ、一定の事由がある場合に、本人の意に 反して、その身分に不利益な変動をもたらす処分

国家公務員法82条(懲戒の場合)

1項 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

× 降任、休職

  • 勤務実績がよくない場合 → 分限処分のうち降任・免職の対象となりうる

3号 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

→ 職務時間外行為も懲戒の理由となりうる。

2項 停職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。

→ 停職処分を受けたその期間中は職員としての身分を保有する

国家公務員法84条(懲戒権者)

懲戒処分は、任命権者が、これを行う。

× 懲戒処分については、人事院がすべての職種についての処分基準を定め、

国家公務員法85条(刑事裁判との関係)

懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる

国家公務員法96条(服務の根本基準)

1項 すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

→ 大臣と職員との間には、公法上の服務関係が成立する。

国家公務員法98条(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)

2項 職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。

→ 争議権は認められていない

国家公務員法102条(政治的行為の制限)

職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

→ 違反した場合は罰則が定められている

国家公務員法106条(勤務条件)

職員の勤務条件その他職員の服務に関し必要な事項は、人事院規則でこれを定めることができる。

地方公務員法24条

地方公務員については、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

× 議会の同意を得て長によって定められることとされている。

地方公務員法58条

1項 地方公務員については、労働組合法の規定は、職員に関して適用しない

3項 労働基準法は原則として適用される

行政手続法3条(適用除外)

1項 公務員の懲戒処分には、行政手続法の定める不利益処分の規定は適用されない

2.6.公物

2.6.1.公物とは

国または公共団体等により、直接公の目的のために併用される個々の有体物。

  1. 人口公物

公衆の利用が可能となる時点を明確にする必要があるので、公用開始行為(一般公衆を名宛人とする行政行為)が行われる。

2.自然公物

自然の状態で公衆の利用に供されてきたものであるので、そもそも公用開始という観念が成り立ちえない。

「公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供されることなく放置され、公共財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人に平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため事実上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げない。」としている。

3.予定公物

将来公物として供用されることが予定されている物である。

判例は、「予定公物について、現に公共の用に供せられていない限り、時効取得が肯定される。」としている。

2.6.1.公物の消滅

  • 「公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供されることなく放置され、・・・、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについての取得時効の成立を妨げない。」としている。

3.行政活動の種別

3.1.行政活動の種別

  • 行政立法

  • 行政行為

  • 行政契約

  • 行政指導

  • 行政計画

  • 行政上の強制執行

  • 即時強制

  • 行政調査

【民法】契約以外の法律関係(事務管理・不当利得・不法行為)

9.事務管理・不当利得・不法行為

9.1.事務管理

697条(事務管理

9.2.不当利得

9.3.不法行為

9.1.事務管理

9.1.1.事務管理とは

事務管理とは、法律上の義務がないのに他人のためにその事務を管理する行為

  • 他人のために行動するという点では委任契約と同じ

  • 契約関係がないのがいちばんの違い

697条(事務管理

1項 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。

698条(緊急事務管理

管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

→ 管理者は、重大な過失があった(注意を著しく欠いた)ときは、損害を賠償する責任を負う。

701条(委任の規定の準用)

事務管理において、本人は、当然には報酬支払義務を負わない

702条(管理者による費用の償還請求等)

1項 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる

3項 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、その費用の支払を請求することができる。

事務管理は、事務管理者と本人との間の法律関係を謂うのであつて、・・・・、その行為の効果は、当然には本人に及ぶ筋合のものではなく、そのような効果の発生するためには、代理その他別個の法律関係が伴うことを必要とするものである。」としている。

◯ 追認がない限り

9.2.不当利得

9.2.1.不当利得とは

不当利得とは、法律上の正当な理由なしに他人の財産または労務から利得を得て、これによって他人に損失を及ぼした者に対して、その利得の返還を命ずる制度

703条(不当利得の返還義務)

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

704条(悪意の受益者の返還義務等)

悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

705条(債務の不存在を知ってした弁済)

債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。

強制執行その他の事由により、やむを得ず給付をした場合には、705条は適用されない。」としている。

707条(他人の債務の弁済)

1項 債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。

708条(不法原因給付)

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。

例)「受益者が犯罪や不法行為をしないこと」の対価として給付者が金銭を給付した場合には、給付者は犯罪や不法行為を阻止しただけであって不法ではないから「不法な原因が受益者についてのみ存したとき」に当たると解される。

事例)Aは、Bとの愛人関係を維持するために、未登記建物をBに贈与し、引き渡した。

「本件贈与の目的である建物は未登記のものであつて、その引渡しにより贈与者の債務は履行を完了したものと解されるから、右引渡しが民法708条本文にいわゆる給付にあたる。」としている。

708条ただし書 ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない

708条にいう「給付があったとして贈与者の返還請求を拒みうるとするためには、・・・既登記の建物にあつては、その占有の移転のみでは足らず、所有権移転登記手続が履践されていることを要する。」としている。

→ 既登記建物を引き渡しただけでは「給付」があったとはいえない

履践・・・実行すること。実践すること

「受領者においてその給付を受けたものをその給付を為した者に対し任意返還することは勿論、先に給付を受けた不法原因契約を合意の上解除してその給付を返還する特約をすることは、同条の禁ずるところでない。」としている。

  • 受益者A:Bに対し賃貸債権300万円

→ Bが500万円弁済、Aは利得200万円

→ BはAに不当利得返還請求できる

※利得について、

  • 善意の受益者A:現存利益の範囲で

  • 悪意の受益者A:全額に利息等を加えて

返還する

9.2.2.不当利得の特則

9.3.一般不法行為

1.債務不履行の場合には、債務者が故意または過失の不存在について立証責任を負う。

2.不法行為の場合には、被害者が加害者の故意または過失について責任を負う。

9.3.1.不法行為とは

「良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者は、・・・、これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益・・・は、法律上保護に値するものと解するのが相当である。」としている。

「患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。」としている。

720条(正当防衛及び緊急避難)

他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。

ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。

2項 他人のから生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した者は、損害賠償の責任を負わない。

722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

1項 不法行為による損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる

✗ 不法行為の場合には、被害者に過失があれば裁判所は必ずそれを斟酌しなければならない。

「交通事故の事案において、幼児の父母の監督上の過失を被害者側の過失として斟酌することを認めている」。

当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。」としている。

723条(名誉毀き損における原状回復)

他人の名誉を毀(き)損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

民法723条にいう名誉とは、人がその品性、悪行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解するのが相当である。」としている。

「原状回復をもつて救済するに適するのは、人の社会的名誉が毀損された場合であり、かつ、その場合に限られると解するのが相当であるからである。」としている。

711条(近親者に対する損害の賠償)

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

不法行為により身体を害された物の母は、『その子の死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められる』場合には、『709条、710条に基いて、自己の権利として慰謝料を請求しうる』。」としている。

712条(責任能力

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

→ 損害賠償の責任を負うのは、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能がある場合である。

713条

精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない

714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)

713条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

ただし書 ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

責任能力のある未成年者が犯罪行為を犯した場合につき、親権者が当該犯罪を予測することはできなかったなどの事情の下において、親権者の監督義務違反を否定している。」

715条(使用者等の責任)

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

3項 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

→ 使用者の求償権の行使は、国家賠償法1条2項のように、被用者の故意または重大な過失がある場合に限られない

「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の求償の請求をすることができる。」としている。

✗ 事情のいかんにかかわらず、全額を求償できる。

「被用者は、・・・、使用者に対して求償《逆求償》することができるものと解すべきである。」としている。

716条(注文者の責任)

注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。

→ 注文者は、注文または指図について過失がなければ、損害賠償責任を負わない

717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

1項 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。

ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない

「鉄道の軌道施設(線路)も、717条1項にいう『土地の工作物』に当たる。」としている。

「土地の所有者は、工作物に瑕疵がないと過失なく信じて土地を買い受けて占有していたとしても、土地の工作物責任を負う。」としている。

→ 717条1項ただし書の所有者の責任は無過失責任であり、無過失であったことを証明して責任を免れることはできない

3項 損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

718条(動物の占有者等の責任)

1項 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。

ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない

→ 猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったことから、損害賠償の責任を免れることができない

2項 占有者に代わって動物を管理する者も、この責任を負う。

占有補助者 → 「動物の占有者」にも「占有者に代わって動物を管理する物」にも当たらない

719条(共同不法行為者の責任)

数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

9.3.2.被害者以外の者の慰謝料請求

9.3.3.過失相殺

9.3.4.消滅時効

9.4.特殊不法行為

9.4.1.一般不法行為との違い

9.4.2.監督者責任

9.4.3.使用者責任

9.4.4.土地工作物責任

9.4.5.共同不法行為

不法行為とは、他人に損害を及ぼす違法な行為であって、加害者がその損害を賠償すべき義務を負うことをいいます。

債務不履行

→ 債務者が故意または過失の不存在について立証責任を負う

不法行為

→ 被害者が加害者の故意又は過失について立証責任を負う

→ 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる

✗ 裁判所は必ずそれを斟酌しなければならない

  • 民法723条にいう名誉とは

→ 人がその品格、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであって、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まねいものと解するのが相当である

→ 責任能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う

→ ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき OR その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき

→ この限りではない

例えば、Aさんは精神的な障害を持っており、その能力に制限があるため、日常生活や法的な手続きを管理することが難しい状況です。Aさんの法定代理人であるBさんは、Aさんの監督を任されており、Aさんの行動や取引を監督する義務を負っています。

ある日、Aさんが精神的な状態からくる行動で、Cさんに対して損害を与えてしまいました。Cさんはその損害を受けて損害賠償を求めます。

この場合、BさんはAさんを監督する法定の義務を負っており、Aさんが第三者に加えた損害についてBさんの責任が問われます。しかし、以下の条件が満たされる場合は、Bさんの責任は免除されます。

1.Bさんがその監督義務を怠らなかったとき。 2.または、Bさんが監督義務を怠っていても、その怠りが損害が生じる原因ではなかったとき。 つまり、Bさんが適切に監督を行い、Aさんの行動をコントロールするための措置を講じていた場合、または監督を怠っていたとしても、その怠りが損害の発生に直接関与していない場合、Bさんは損害賠償の責任から免れることができます。

注文者と請負人

  • 注文者 → 請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない

→ 過失があったときは、この限りではない

= 注文者は、注文または指図について過失がなければ、損害賠償責任を負わない

数人が共同の不法行為

  • 共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないとき

→ 各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う

特殊的不法行為

【民法】契約総論

7.契約総論

7.1.契約の成立

7.2.契約の種類

7.3.同時履行の抗弁権

7.4.危険負担

7.5.解除

契約総論

7.1.契約の成立

521条(契約の締結及び内容の自由)

1項 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。

2項 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

522条(契約の成立と方式)

2項 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない

523条(承諾の期間の定めのある申込み)

承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。

例1)撤回できない場合

AさんがBさんに「この商品を1ヶ月以内に購入するかどうか決めてください」とオファーを出します。 この場合、Aさんはその1ヶ月の間、Bさんに対してこのオファーを撤回することはできません。

例2)撤回する権利を保留した場合

AさんがBさんに「この商品を1ヶ月以内に購入するかどうか決めてください。ただし、私はいつでもこのオファーを撤回する権利を保留します」とオファーを出します。 この場合、Aさんはその1ヶ月の間でも、Bさんに対してオファーを撤回することができます。

524条(遅延した承諾の効力)

申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

525条(承諾の期間の定めのない申込み)

1項 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。

✗ 申込者が承諾の期間を定めないでした申込みは、いつでも撤回をすることができる。

2項 対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。

526条(申込者の死亡等)

申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。

✗ 当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。

528条(申込みに変更を加えた承諾)

承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

✗ その申込を拒絶したことにはならない。

7.2.契約の種類

7.3.同時履行の抗弁権

同時履行の抗弁権とは

民法上の多くの契約が双務契約であり、お互いに債務を負っています。この場合、自分が債務を履行しても、相手が履行してくれなければ不公平なので、「相手がやらなければ自分もやらない」という主張を認めることにしています。

双務契約・・・お互いに債務を負っている

533条(同時履行の抗弁)

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。

同時履行の抗弁権は、公平の観点から認められ、間接的に相手方の債務の履行を促す機能を果たす。

533条ただし書 ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

= 同時履行の抗弁権を行使することはできない。

✗ 双方の債務の弁済期が、同じである必要がある。

  • 「双務契約の当事者の一方(原告)が訴訟をもって債務の履行を請求した場合に、相手方(被告)から同時履行の抗弁の提出があったときは、原告の債務の履行と引換えに被告の債務の履行を命ずる旨の判決(引換給付判決)がなされる。」としている。

  • 同時履行の抗弁権は、双務契約の相手方以外の第三者に対しては主張することができない

事例)A所有の機器甲をBに売却する売買契約

→ BはAに対し売買代金を支払わないうちにCに転売

→ Aが甲をまだBに引き渡していない場合、CがAに対して引渡しを求めたとき

→ Aは、契約当事者でないCに対して、同時履行の抗弁権を行使することができない。

546条(契約の解除と同時履行)

契約が解除された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。

✗ 同時履行の抗弁権は、契約の解除による原状回復義務の履行債務については行使することができない。

「売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、『民法533条の類推適用により同時履行の関係にある』。」としている。

✗ 双務契約の一方が詐欺を理由として取り消された場合、詐欺を行った当事者は、当事者双方の原状回復義務につき、同時履行の抗弁権を行使することができない。

「双務契約の当事者の一方は相手方の履行の提供があっても、その提供が継続されない限り同時履行の抗弁権を失うものではない。」としている。

7.4.危険負担

危険負担とは、例えば建物の売買契約締結後、引渡し前において、落雷など売主(債務者)の帰責事由によらずに建物が滅失して売主の引渡債務が履行不能になった場合、買主(債権者)が代金の支払いを拒むことができるかという問題。

536条(債務者の危険負担等)

1項 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる

2項 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない

事例)Aさん(債権者)はBさん(債務者)に対して、特定の商品を購入する契約を結びました。(Bさんはその商品をAさんに供給する義務があります。AさんはBさんに対して商品代金を支払う義務があります。)

→ Aさん(債権者)が商品の受け取りのために指定した場所が、Aさんのミスで存在しない住所であったため、Bさんが商品を納品できませんでした。

→ Bさんは指定された住所に商品を納品することができず、Aさんのミスが原因で商品の納品が不可能になりました。

→ この場合、Aさんのミスが原因でBさんが債務を履行できなかったため、Aさんは商品の代金の支払いを拒むことはできません。

→ 仮にBさんが商品の納品義務を免れたことで他の利益(例えば、商品の保存費用が節約できたなど)を得た場合、Bさんはその利益をAさんに償還しなければなりません。

7.5.解除

7.5.1.解除の意義

解除とは、契約が締結された後に、当事者の一方的な意思表示によって、契約が最初からなかったのと同じ状態に戻すための制度です。

541条(催告による解除)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

「債権者は、期間を定めずに催告した場合でも、催告の時から相当の期間を経過すれば、契約の解除をすることができる。」としている。

542条(催告によらない解除) 

1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

1号 債務の全部の履行が不能であるとき。

事例)特定物の買主は、契約締結後に目的物が不可抗力によって滅失したときは、契約の解除をすることができる

「履行期に履行できないことが確実になった場合には、履行期の到来を待たずに、その時から解除をすることができる。」としている。

2号 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)

債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、債務不履行を理由とする契約の解除をすることができない。

544条(解除権の不可分性)

当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。

545条(解除の効果)

1項 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。

3項 金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。

4項 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない

→ 解除権を行使した場合でも、債務不履行を理由とする損害賠償請求をすることができる。

7.5.2.解除の種類
7.5.3.法定解除
7.5.4.解除権の不可分性
7.5.5.解除の効果

債務不履行解除の要件

  1. 債務者が履行期に債務を履行しないこと

2.債権者が相当の期間を定めて履行の催告をすること

3.債務者が相当の期間内に履行しないこと

4.相当の期間経過時における債務不履行が軽微でないこと

5.解除の意思表示をすること

催告が不要な場合
  1. 債務の全部の履行が不能であるとき

例)売買の目的物である建物が火災により全部消失した場合

  • 債務不履行の原因が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき

→ 債務不履行を理由とする契約の解除をすることができない

解除権の不可分性

当事者の一方が複数いる場合、契約の解除はその全員からまたはその全員に対してする必要があります

解除権の行使と損害賠償請求

解除権の行使は、損害賠償請求を妨げない

よって、解除権を行使した場合も、債務不履行を理由とする損害賠償請求をすることができる

【民法】用益物権・担保物権(担保物件・抵当権・質権・留置権・先取特権)

6.用益物権

6.1.用益物権とは

6.2.地役権

6.2.1.地役権とは

6.2.2.要役地・承役地の移転

6.2.3.地役権の時効取得

7.担保物件

7.1.担保物件

7.2.抵当権

7.2.1.抵当権とは

7.2.2.抵当権の順位

7.2.3.抵当権と第三取得者

7.2.4.抵当権の効力

7.2.5.物上代

7.2.6.抵当権の侵害

7.2.7.法定地上権

7.2.8.土地と建物の一括競売

7.2.9.抵当権と賃借権

7.2.10.建物明渡し猶予制度

7.3.質権

7.3.1.質権とは

7.3.2.動産質と不動産質

7.4.留置権

7.4.1.留置権とは

7.4.2.留置権の成立要件

7.4.3.留置権対抗要件

7.4.4.留置物の保管・使用

7.5.先取特権

7.5.1.先取特権とは

7.5.2.先取特権の種類

7.5.3.第三取得者との関係

7.5.4.先取特権と物上代

6.用益物権

6.1.用益物権とは

1.地上権

他人の土地において、工作物や竹木を所有するために、その土地を使用する権利

2.永小作権

3.地役権

自己の土地の便益を高めるために、他人の土地を使用する権利

4.入会権

6.2.地上権

269条1項 地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物及び竹木を収去することができる。ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない

269条の2第1項 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。

267条 相隣関係の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。

相隣関係の規定:他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るために、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

6.2.地役権

6.2.1.地役権とは

280条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。

→ 自分の土地(要役地)の便益を高めるために、他人の土地(承役地)を使用する権利

事例)A所有の甲土地、B所有の乙土地、甲土地にC所有の丙建物

→ Bが甲土地に乙土地からの排水ための地役権をA・B間で設定

→ CがAに無断で甲土地に丙建物を築造、乙土地からの排水の円滑な流れを阻害

→ Cに対して甲土地の明け渡しを求めることはできない。

※地役権に占有権能は含まない。

282条1項 土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。

× 単独で同地役権を消滅させることができる。

6.2.2.要役地・承役地の移転

Aの土地 |Bの土地        ↓       Cへ移転

→ Cは要役地の所有権移転登記があれば、地役権の登記がなくても承役地所有者Aに地役権を主張できる。

Aの土地 |Bの土地  ↓ Cへ移転

→ Bは地役権の登記がなければ、原則として承役地の新所有者に地役権を主張することができない。

6.2.3.地役権の時効取得

283条 地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

「通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によつてなされることを要するものと解すべ」きであるとしている。

→ みずから通路を開設しなければ、乙土地上に通行地役権を時効取得することができない。

293条 地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。

7.担保物件

7.1.担保物件

「お金の回収を確実にする権利」

  1. 抵当権

2.質権

3.留置権

4.先取特権

7.2.抵当権

7.2.1.抵当権とは

不動産を債務の担保として、債務が弁済されないときはその不動産を競売にかけて、売買代金から優先的に回収を受けることができる権利。

369条2項 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。

地上権

265条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。

永小作権

270条 永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。

373条 同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

392条 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。

→ 1つの債権について複数の抵当権を設定することができる

「将来発生する債権のために、あらかじめ抵当権を設定することも許される」としている。

事例)Aに対して債務を負うBがAnoために抵当権設定

→ Bが残存元本、最後の2年分の利息および遅延損害金支払

→ Aの抵当権は消滅しない。

「債務者または設定者は元本債権のほか利息・損害金の全額を弁済しなければ抵当権を消滅させることはできない」。

370条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(抵当不動産)に付加して一体となっている物に及ぶ

× 抵当不動産の附加一体には及ばない。

371条 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ

→ 担保債権の不履行があった後に抵当不動産から生ずる果実については、抵当権の効力が及ぶことから、抵当権設定者の側では収取することができない。

375条 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。

→ 抵当権者は、利息その他の定期預金を請求する権利を有するときは、原則として、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。

「抵当権の効力は、抵当不動産の従物にも及ぶ。」

例)B所有の建物内のテレビは従物に当たらない。

「従物について別個に対抗要件を具備しなくても、従物にも抵当権の効力が及びことを対抗することができる。」としている。

「借地上の建物に抵当権が設定された場合、建物の抵当権の効力は、原則として借地権にも及ぶ。」としている。

「買戻特約付売買の目的不動産に抵当権が設定されていた場合、買主が買戻権により取得した買戻代金債権についても抵当権者は物上代位権を行使することができる。」としている。

「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について上代位権を行使することができないと解すべきである。」としている。

× 転貸料債権に対しても物上代位権を行使することができる。

「抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。」としている。

「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。」としている。

「土地に一番抵当権が設定された当時、その土地上に建物が存在しない場合は、二番抵当権設定当時に建物が建てられており、かつ、二番抵当権者の申立てにより土地の競売が行われた場合でも、建物のために法定地上権は成立しない。」としている。

「抵当権を設定した後に建物を取り壊し、新建物を建てた場合は、旧建物が存在する場合におけるのと同一の範囲内で新建物のために法定地上権が成立する。」としている。

「土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、・・・、新建物のために法定地上権は成立しない。」としている。

「抵当権設定当時において土地および建物の所有者が格別である以上、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落のさい、たまたま、右土地および建物の所有権が同一の者に帰していたとしても、民法388条の規定が適用または準用されるいわれはなく・・・」として、法定地上権は成立しない。」としている。

事例)Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権設定

→ 抵当権が実行されCが買い受け

→ 抵当権設定当時、A所有の建物が建っていたが、地震で倒壊、抵当権者の承諾を得て建物を建築

→ 再築が競売後になされた場合、Cの利益を害するため、法定地上権は成立しない

388条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。

「建物に抵当権が設定された当時に土地と建物の所有者が異なっていた事案について、法定地上権は成立しない。」としている。

事例)AがBから土地を借り、建物所有、Bは甲抵当権を設定

→ Aから建物取得、乙抵当権を設定。甲抵当権の被担保債権について弁済、甲抵当権は消滅

→ 乙抵当権は弁済できず、乙抵当権が実行、土地はCが取得

→ 乙抵当権の設定時に土地と建物が同一の所有者に属していたことから、法定地上権が成立する

法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時の土地・建物の登記名義人が同一でなくても、実際の所有者が同一であればよい。」としている。

「『建物』に1番抵当権が設定された当時は土地と建物の所有者が異なっていたが、2番抵当権が設定された当時は双方の所有者が同一となった場合には、1番抵当権者の申立てによる競売が行われたときでも、法定地上権が成立する。」としている。

「A所有の土地上にAB共有の建物が存在し、Aの土地に抵当権が設定された場合、競売の結果、法定地上権が成立する。」としている。

  • 抵当権設定者以外の者が建物を築造した場合であっても、一括競売をすることができる

  • 抵当権の設定後に抵当地に建物が造築されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる

387条1項 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。

395条1項 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(抵当建物使用者)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6カ月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

1号 競売手続の開始前から使用又は収益をする者

395条2項 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1カ月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない

→ 引渡しの猶予を受けた抵当建物使用者は、買受人の買受けの時より後に生じた建物使用の対価を支払う義務を負う

378条(代価弁済) 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

379条 抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

384条1項

1号 その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後2か月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。

7.2.2.抵当権の順位
7.2.3.抵当権と第三取得者
7.2.4.抵当権の効力
7.2.5.物上代
7.2.6.抵当権の侵害
7.2.7.法定地上権
7.2.8.土地と建物の一括競売
7.2.9.抵当権と賃借権
7.2.10.建物明渡し猶予制度

7.3.質権

7.3.1.質権とは

動産や不動産などを債務の担保として手元に置くことにより債務の履行を促し、債務が弁済されないときはその不動産を競売にかけて、売却代金から優先的に回収を受けることができる権利

344条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

✗ 引き渡さなかったとしても、その効力は生ずる。

  • 占有改定による引渡しは含まれない。

  • 差押えが禁じられている物については、処分が禁止されているわけではないので、質権を設定することができる

  • 不動産質権者は、質権設定登記をしなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

352条 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

353条 動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

→ 占有を失ったときは質権に基づく物権的請求権によって質物(しちもの)を取り戻すことはできない。

192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

→ 債務者が他人の所有に属する動産につき質権を設定した場合であっても、債務者は、その動産が債務者の所有物であることについて過失なく信じたときは、質権を即時取得することができる。

7.3.2.動産質と不動産質

356条 不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。

→ その使用および収益については、質権設定者の承諾を得ることを要しない

362条1項 質権は、財産権をその目的とすることができる。

7.4.留置権

7.4.1.留置権とは

295条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

→ 債務者を占有代理人とした占有は含まれない。

事例)D所有の所有物をEに売却後、Fにも売却

→ Fが移転登記。FがEに対して明け渡し要求

→ 「FはDの売買契約不履行に基づく損害賠償請求権をもって留置権を主張することは許されない。

「他人物売買の売主が買主に所有権を移転できなかった場合、買主は、真の所有者からの返還請求に対して、他人物売主に対する損害賠償請求権を保全するために留置権を行使することはできない」。

7.4.2.留置権の成立要件

295条2項 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない

「賃貸借契約解除後に賃借人が賃借物につき『支出した有益費の償還請求権については、・・・本件建物につき、右請求権に基づく留置権を主張することはできない』」としている。

有益費・・・その物の改良のために支出した費用等のこと。

留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても、債務者がその留置権を主張しうることは、留置権が物権であることに照らして明らかである」としている。

× 第三者に移転した場合に、消滅する。

298条1項 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

→ 善良な管理者の注意 = 自己の財産に対するのと同一の注意よりも重いものである。

298条2項 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

→ 留置中に「その物の保存に必要な使用」をすることができるが、その使用による利得を不当利得(703条)として返還する義務がある。

298条3項 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる

300条 留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。

→ 消滅時効が進行する。

7.4.3.留置権対抗要件
7.4.4.留置物の保管・使用

7.5.先取特権

7.5.1.先取特権とは

303条 先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

先取特権の目的となりうる → 債務者の所有に属する物に限られる。

事例)A所有の甲機械をBに賃貸、賃貸借期間中にCがBから修理請け負い、Cが修理完了

→ CがBに返還、Bが修理代金を支払わない

→ CはBが占有する甲につき、先取特権を行使することはできない。

7.5.2.先取特権の種類

1.一般先取特権

2.動産先取特権

311条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。

5.動産の売買

事例)A所有の機械甲をBに売買契約、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売

→ Aは甲を引渡し済、さらにBがCに引渡し済

→ Aは先取特権を行使すうることはできない。

333条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない

「この引渡しには、占有改定による引渡しも含む」。

313条2項 建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。

✗ 財産分与請求権

3.不動産先取特権

不動産賃貸の先取特権は、即時取得の対象となる。

事例)債権者が不動産先取特権の登記

→ 債務者が第三者に売却

→ 不動産先取特権者は、第三取得者に対して先取特権を行使することができる。

7.5.3.第三取得者との関係

333条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。

7.5.4.先取特権と物上代

事例)AがBに売却、BがCに売却

→ BがCに対して保有するCへの売却代金債権

→ に対してAは、物上代位することができる。

304条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。

「請負代金債権の全部又は一部を右不動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができると解するのが相当である」としている。

「動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差押えて物上代位権を行使することはできないものと解するのが相当である」としている。

327条 不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。

330条 同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。

1号 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権

3号 動産の売買

331条 同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第325条各号に掲げる順序に従う。

1号 不動産の保存 2号 不動産の工事 3号 不動産の売買

✗ 債権額の割合に応じて弁済を受ける。

337条 不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。

339条 前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。

  • 継続的に行使され、

  • 外見上認識することができるものに限り

→ 時効によって取得することができる

担保物権

留置権

先取特権

質権

質権とは

質権の設定

債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる

抵当権

抵当権とは

不動産を債務の担保として、債務が弁済されないときは不動産を競売にかけて、売却代金から優先的に回収を受けることができる権利

  • 地上権および永小作権も、抵当権の目的とすることができる

✗ 地上権を抵当権の目的とすることはできない

抵当権の順位

1つの不動産に対して、抵当権を2つ以上設定することもできますが、抵当権も物権であるため、その優劣は登記の先後で決めることになります。

抵当権の効力

抵当権者は、利息その他の定期預金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができます。

上代

上代位とは、抵当権者がその担保目的物の売却、賃貸、滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても担保権を行使することができるというもの。

賃貸借・転貸借
  • Bが、抵当権の設定された建物をCに賃貸

→AはBのCに対する賃料について物上代位できる

  • CがBの承諾を得て建物をDに転貸した

→AはCのDに対する転貸料について物上代位できない

✗ 転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができる

抵当権の侵害

抵当権には不動産を使用する権限があるわけではないため、抵当不動産が不法占拠されていても抵当権に基づく妨害排除請求はできないはずですが、不動産の価値が下がってしまうような場合には例外的に妨害排除請求をすることができます。

抵当権に基づく妨害排除請求ができるための要件

抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済権行使が困難になるような状態がある場合

法定地上権

最初は土地と建物の所有者が同じだったが、抵当権が実行されて別々の所有者に変わった

→この場合、建物所有者Cと土地所有者Bの間に契約はないので、Cは不法占拠者としてBから立ち退きを求められてしまう。

→以上のようなことが求められてしまうため、一定の要件を満たせば、土地に対して自動的に地上権が成立し、建物所有者が建物を取り壊さずに住み続けることができるという制度をつくりました。これが法定地上権です。

法定地上権成立の要件

  1. 抵当権設定当時、建物が存在していたこと 2.抵当権設定当時、土地・建物が同一所有者だったこと

抵当権と賃借権

抵当権が設定されている土地や建物を誰かに貸すことは問題なくできます。

ただし、借主は自分の賃借権を抵当権者に主張することができません(抵当権が実行されたら退去しなければなりません)。

これでは借り手がいなくなってしまうため、民法では「抵当権者の同意の登記」という制度が設けられています。

  • AがBの土地を抵当権

→BがCに土地を賃貸借(登記済)

→Cは抵当権者Aの同意を得て、同意の登記をすれば抵当権者に対抗できる

根抵当権

譲渡担保

所有権留保

【民法】占有権

占有権

  • 占有権 → 代理人によって取得することができる。

土地の所有者が賃借人(占有代理人)に土地を引き渡した場合 → 代理占有になることから、占有権を失わない

  • 占有者 → 所有者の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定される

✗ みなされる

  • 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定される

✗ みなされる

  • 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還および損害の賠償を請求することができる。

占有訴権

占有回収の訴え

  1. 占有を奪われたときから1年間しか行使できない

2.占有を奪った者から善意で占有を継承した者には、占有回収の訴えを提起できない

→ 承継人が悪意であったときはこの限りではない

占有権は

→ 代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと

によって消滅する。

✗ 代理権の消滅によって消滅する → 代理権の消滅のみによっては、消滅しない

共有

  • 共有者の1人が持分を放棄

→ その持分は、他の共有者に帰属する

  • 共有物を使用する共有者は、原則として他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う

  • 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない

共有物の使用関係

管理行為

共有物の性質を変えることなく、これを利用しまたは改良する行為

→ 持分の価格の過半数の同意

変更行為

共有物の性質もしくは形状またはその両者を変更すること

→ 共有者全員の同意

保存行為

共有物の現状を維持する行為

→ 単独で可能

  • 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払う

共有物分割請求

共有者間に協議が調わないとき または 協議をすることができないとき

→その分割を裁判所に請求することができる

【民法】動産物権変動

1.動産物権変動総説

2.即時取得

2.1 即時取得とは

2.2 盗品・遺失物の特則

1.動産物権変動総説

178条 動産に関する物件の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

事例1)Aが自己所有の甲機械をBに譲渡

→ 引き渡し前にAの債権者Cが差押え

→ BはCによる強制執行の不許を求めることはできない。

動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

事例2)Dが自己所有の乙機械をEに賃貸

→ 引き渡し、使用開始したが、Dは賃貸借期間の途中でFに対して譲渡

→ D・F間において指図による占有移転なし(=引渡しを受けていない)

→ 乙機械を取得したことをEに対抗することはできない。

「動産の賃借人は、178条の『第三者』に当たる」

動産引渡しの種類

占有改定

183条 占有代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

指図による占有移転

184条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

事例)AがB倉庫にある商品をCに売却

→ B倉庫の経営者に、Cのために保管するよう通知

→ Cがこれを承諾したとき

→ Cは、占有権を取得する。

事例)Aは、B所有の絵画を預かっている(寄託

→ Bが第三者Dに売却、Dは所有権取得

→ 引渡しを受けていなくてもAに絵画の所有権を対抗することができる。

寄託 = 178条の「第三者」には当たらない。

事例)Gは丙機械をHに寄託、Hが保管(一時保管するに過ぎない)、GはIに丙機械を譲渡

→ HがGに代って一時丙機械を保管するに過ぎないとき、GはIに対して譲渡を否認する正当な利害関係を有していない

→ Iの所有権に基づく引渡しの請求に応じなければならない。

動産の寄託を受けて一時保管 = 178条の「第三者」には当たらない。

事例)A所有の機器甲をBに売却の売買契約

→ BはAに対して売買代金を支払わないうちに、Cに転売

→ AがBに引き渡していない場合、Bの代金不払いを理由にAが売買契約を解除

→ 解除権者Aは、第三者Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことができる。

「解除前に買主から目的物である『動産』を転得した第三者が『引渡し』を受けていないときは、所有権の取得を解除権者に対抗することができない」

2.即時取得

2.1 即時取得とは

192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

動産即時取得の要件

取得者の要件

  • 平穏・公然・善意・無過失

  • 引渡しを受けること

事例)Aの宝石をCが盗難

→ Bに売却

→ Bが善意かつ無過失の場合、即時取得により所有権を主張できる

事例)A所有のカメラ、Bが占有

→ CがBに所有権があると誤信、過失なく買い受けた

→ Cは善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

目的物の要件

  • 動産であること

事例)Aの建物(不動産)をCに賃貸

→ Cが自己の所有する建物としてBに売却

→ 建物は動産ではないため、Bは即時取得できない

取得行為の要件

→ 即時取得は成立しない。

→ 即時取得は成立しない。

事例)自己の所有物として誤信

→ 取引行為によって占有を開始したのではない。

民法192条の適用がないもの

道路運送車両法による登録を受けている自動車については、登録が所有権の得喪並びに抵当権の得喪及び変更の公示方法をされているものであるから・・・、」

→ 民法即時取得の規定の適用はない

188条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

→ 「占有取得者自身において、過失のないことを立証することを要しない」。

「譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、・・・いわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らない」

→ 占有改定によっては即時取得は成立しない。

指図による占有移転

事例)BはCにカメラ売却、売却前にDに寄託

→ BがCに売却するに際し、Dに対して以後Cのために占有することを命じ、Cが承諾

→ Dが承諾しなくても、Cは即時取得により所有権を取得する。

「指図による占有移転をうけることによつて民法192条にいう占有を取得したものである」として、即時取得が成立する。

2.2 盗品・遺失物の特則

193条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

事例)美術商A自己の絵画が盗難に遭う

→ Bの美術館に掲示、Bは承認ではないCがBのもとに持ち込み買取を求めたことが判明

→ Bに即時取得が成立していても、Aは2年以内であれば、引渡しを求めることができる。

【民法】物権総論・不動産物権変動

1.物権総論

1.1.物権とは

1.2.物権の種類

1.3.物権的請求権

2.不動産物権変動

2.1.不動産物権変動総説

2.1.1.不動産物権変動とは

2.1.2.177条の第三者

2.2.登記が必要な物権変動

2.2.1.取消しと登記

2.2.2.解除と登記

2.2.3.取得時効と登記

2.2.4.相続と登記

1.物権総論

1.1.物権とは

175条 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

1.2.物権の種類

1.3.物権的請求権

事例1)A、自己所有の土地、Bとの間で賃貸借契約

→ AがBに引渡し要求

→ 契約直後にCが無断で占拠

→ Aは自己の土地所有に基づく物権的請求権を行使できる

事例2)Aが所有の甲土地に、Bが権原なく乙建物を建設

→ Cに譲渡

→ Aは、Cに対して建物の収去を求めることができる。(最判昭35.6.17)

事例3)Aが所有の甲土地に、Bが権原なく乙建物を建設

→ Cに譲渡、登記はB名義のまま

→ 登記がBの意思に基づいて行われた

→ Bは、Aに対して乙建物の収去および甲土地の明け渡しの義務を免れない(最判平6.2.8) 

2.不動産物権変動

2.1.不動産物権変動総説

2.1.1.不動産物権変動とは

「売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、・・・、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずる」としている。(最判昭33.6.20)

  • 当該樹木のみの処分または所有権の留保を第三者に対抗するには、明認方法と呼ばれる特別な公示方法を要する

2.1.2.177条の第三者

不動産に関する物権変動は、登記をしなければ第三者に対抗することができない

「買主は、たとえ不動産を転売してその所有権を失ったとしても、・・・、転売によって自己の登記請求権を失うものではない」としている。(大判大5.4.1)

177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

→ 先に登記の移転を受けた方が所有権を取得する。

177条の第三者

登記をしなければ「第三者」に所有権を主張できない。

  1. 二重譲渡の譲受人

2.抵当権、地上権等の制限物権者

3.不動産賃借人

「①当事者もしくはその包括承継人以外の者で、②登記の欠缺を主張するに正当な利益を有する者」(大判明41.12.15)

事例1)A所有の甲地がBに譲渡

→ AB間の譲渡の事実を知っているCに譲渡 → Cに所有権移転登記

→ Bは登記がなければ所有権をCに対抗することができない。

177条の「第三者」については、善意・悪意を問わない。

事例2)A名義の甲土地をBか買い受ける契約

→ B名義での所有権移転の仮登記

→ Aが事情を知らないFに売却し所有権移転登記

→ Bは本登記をしない限り、Fに対して所有権の取得を対抗することができない。

仮登記 → 177条の対抗力は認められない

三者にあたらない例

→ 「第三者」に該当せず、「登記がなくとも所有権の取得を主張を対抗し得る」(最判昭25.12.19)

事例)A所有の甲土地

→ Bに売却、重ねてAが背信的悪意者Cに売却

→ Cが悪意者Dに売却

→ Bは、登記がなければDに所有権の取得を対抗することができない。

D ↔ B :D自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができる。

背信的悪意者:Bに登記がないことを知っているだけではなく、そこに目をつけて「高値で売りつけてやろう」という意思でAから土地を買った者のように、悪意であって、かつ、登記の欠缺を主張することが信義に反する者のこと。

事例)甲は乙から土地を購入し登記

→ 乙が未成年者丙からその法定代理人の同意なしに購入

→ 丙が乙との売買契約を取消

→ 三者[甲]は、取消しによって無権利になるために、登記があっても保護されない。 

事例)甲は乙から土地を購入し登記 → 乙が丙から購入

→ 強迫を理由として丙が乙との売買契約を取消

→ 甲は丙に対抗することができない。=登記があっても保護されない

事例)AからBに売却

→ BからCに転売

→ AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消し

→ Cは善意無過失であれば登記がなくても保護される。最判昭49.9.26)

事例)AがBに売却

→ AがBの詐欺を理由に取消したが

→ 既にCに転売済、Cは善意無過失

→ 善意でかつ過失がない第三者Cは、所有権を主張するために、対抗要件を備える必要はない。

詐欺による意思表示の取消は、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

事例)Bは詐欺によりAの不動産を売却させ

→ Aは詐欺を理由に取消

→ Aの登記回復前にBが善意の第三者Cに譲渡、Cは登記を備えた

→ Aは取消の効果をCに対抗することができない。

取消後の第三者 → 登記をしなければ、取消後の第三者に対抗することができない

事例)AからBに不動産売却

→ BはCに転売、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し履行を催告し、売買契約を解除

→ Cは登記を備えていなければ保護されない

545条1項ただし書の「第三者」として保護されるためには登記が必要である。」(最判昭33.6.14)

2.2.登記が必要な物権変動

2.2.1.取消しと登記
2.2.2.解除と登記
2.2.3.取得時効と登記
2.2.4.相続と登記
  • AがBに売却

→ BがCに転売

→ A・Bの取引が合意解除

→ Cは善意であっても登記を備えていなければ保護されない

545条1項ただし書の「第三者」として保護されるためには登記が必要である。」(最判昭33.6.14)

→ 債務不履行であっても合意解除であっても異ならない。

事例)AからBに売却

→ Bに代金不払い

→ AがBに対し履行を催告し、売買契約を解除

→ Bから解除後にその不動産を買い受けたC

→ 善意であっても登記を備えなければ保護されない。

解除後の第三者との関係

取得時効と登記

時効完成前の第三者

  • AがBに土地売却

→ Bが10年以上占有継続

→ 5年経過時にAがCに売却

→ Aの土地を時効取得したBは、時効完成前の第三者Cに対して、登記がなくてもCに所有権を主張できる

時効完成後の第三者

  • Aの土地を時効取得したB

→ 時効完成後の第三者Cに対して所有権を主張できるか

→ Cに登記あり: BはCに所有権を主張できない

→ Bに登記あり: BはCに所有権を主張できる

  • 起算点の選択:時効援用者が起算点を任意に選択して、時効完成時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
相続と登記
  • A死亡

→ 相続人Cが自分の相続分を超えて土地全部をDに売却

→ 他の共同相続人Bは、登記がなくても、自分の持分をDに対して請求できる

事例1)A死亡、Aの妻、子CおよびDを共同相続人

→ AとB居住の甲建物、Aの死後Bに相続させる遺言

→ Cが相続開始、共同相続登記、自己の持ち分の4分の1を第三者Eに譲渡

→ Bの法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない

事例2)A名義の甲土地、Bが購入の契約

→ 甲土地が相続によりAおよびEに共有、AがEに無断でAの単独所有名義の登記、Bと売買契約

→ Bが所有権移転登記、Bがその事情を知らず、かつ、過失がない

→ Bは全部について所有権を取得することはできない。

他の共同相続人(E)は、登記がなくても自己の持分を対抗することができる

事例3)Aの妻B、子C・D・E

→ 遺産分割前に共同相続人Dから相続財産のついて共有持分を譲り受けた第三者H

→ 「第三者」Hは登記がなければ共有持分の取得をB・C・Eに対抗することができない。

事例4)共同相続人の一人Aが相続放棄、他の共同相続人Bが単独で継承

→ Bの登記前に、Aが相続放棄しなければ得たであろうAの持分に対し、Aの債権者Cが仮差押え、登記

→ Bは登記がなくても、Aの相続放棄による所有権の取得をCに対抗することができる。

相続放棄の効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずる」としている。

事例5)A所有の甲土地、AがBに対して遺贈する旨の遺言、A死亡

→ Aの相続人Cの債権者Dが、Cを代位してC名義の登記、甲土地を差し押さえ

→ BはDに対して、登記をしていなければ、遺贈による所有権の取得を対抗できない

「遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもつて物権変動の対抗要件とするものと解すべきである

遺産分割と登記
  • A死亡 → 妻B、子CDE → 子Dが共有持分をHに譲受

→ Hは登記があれば共有持分の取得をBCEに対抗できる

  • 共同相続人Aが相続放棄 → 共同相続人Bが単独で承継 → Bの登記前にAの持分に対し債権者Cが仮差押えし、登記

→ Bは登記がなくても、Aの相続放棄による所有権の取得をCに対抗することができる

相続放棄の効力は絶対的で、何人に対しても、登記簿なくしてその効力を生ずる」

【民法】条件及び期限・期間・時効

1.条件及び期限

1.1.条件

1.2.期限

1.1.条件

2.期間

2.1.期間

3.時効

3.1.時効とは

3.2.取得時効

3.3.消滅時効

3.4.時効の援用・放棄

3.5.時効の完成の猶予・更新

1.条件及び期限

1.1.条件

127条1項 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。

「売買契約において、買主が品質良好であると認めた場合には代金を支払うとする旨の約定は134条の債務者の意思のみに係る停止条件には当たらない」としている。(最判昭31.4.6)

= 買主が認めた場合だけ支払する契約はOK

127条2項 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

127条3項 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

130条1項 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

130条2項 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

事例1)A・B間の契約

→ Bは一定の行為をしないこと、もし禁止行為をした場合、Aに違約金払う条項

→ Aが第三者を介してBの禁止行為を誘発

→ 条件が成就しなかったとみなして違約金支払い義務を免れることができる。

「農地の売買契約において、必要な行政の許可が得られたときに効力を生ずる旨の条項は、法律上当然に必要なことを約定したにとどまり、停止条件を付したものとはいえない。」(最判昭36.5.26)

132条 不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

× 「不法な行為をしないことを条件とする」法律行為は、有効である。

133条1項 不能停止条件を付した法律行為は、無効とする。

この項目は、「停止条件」としての「不能」を付した法律行為に焦点を当てています。停止条件とは、ある事象が起こった場合に、法律行為が無効になるという条件のことです。ここでいう「不能」とは、その条件が実現不可能な状態を指します。例えば、ある人が「私が月に行ったらこの契約を無効にする」と条件を付けた場合、その条件は現実的に不可能なため、法律行為自体が無効とされます。

133条2項 不能解除条件を付した法律行為は、無条件とする。

この項目は「解除条件」としての「不能」に焦点を当てています。解除条件とは、ある事象が起こった場合に、法律行為が有効になるという条件のことです。ここでも「不能」という実現不可能な状態が条件として設定されています。例えば、「私が月から帰ってきたらこの契約を有効とする」という条件を付けた場合、その条件は現実的に不可能なため、条件を無視して法律行為を無条件で有効とします。

134条 停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

1.2.期限

135条1項 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。

135条2項 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

136条1項 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。

137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。

1.債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

2.債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

3.債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

「いわゆる出世払い約款は不確定期限を付したものであり、停止条件を付したものではない」としている。(大判大4.3.24)

2.期間

2.1.期間

139条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

× 午前零時から始まるときを除き、期間の初日を算入する。

3.時効

3.1.時効とは

144条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

3.2.取得時効

  • 土地上の建物の賃借人は。「土地の取得時効の完成によつて直接利益を受ける者ではないから、右土地の所有権の取得時効を援用することはできない」としている。(最判昭44.7.15)

146条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

✗ 完成する前に放棄することができる。

取得時効の要件

162条1項 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

  • 「他人の物」を占有すること

  • 「所有の意思」をもって占有すること

  • 「平穏かつ公然」に占有すること

  • 「善意無過失」の場合は10年間占有を継続すること  「悪意」の場合は20年間占有を継続すること

  • 「援用」すること

✗取得時効の対象になるのは所有権だけ

→所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、その権利を取得する

「一筆の土地の一部であっても、時効による所有権取得の目的となる」。(大判大13.10.7)

163条 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、162条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する

占有の継承

事例1)BがAの土地を占有し7年【善意無過失】

→ CがBを相続して5年

→ Cは12年の善意無過失の占有(取得時効は完成する

事例2)BがAの土地を占有し7年【悪意】

→ CがBを相続して5年

→ Cは12年の悪意の占有(取得時効は完成しない

3.3.消滅時効

権利を取得した後に何もしないまま一定期間を経過すると、権利が消滅することになります。

166条1項 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

1.債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。

一般の債権

  • 知った時から5年

  • 権利を行使できる時から10年

債務不履行に基づく身体の侵害による損害賠償請求権

167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての166条第1項第2号の規定の適用については、「20年間」とする。

  • 知った時から5年

  • 権利を行使できる時から20年

不法行為に基づく損害賠償請求権

724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

1.被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。

2.不法行為の時から20年間行使しないとき。

人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権

724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての723条第1号の規定の適用については、「5年間」とする。

3.4.時効の援用・放棄

3.4.1.時効の援用

145条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

  • 取得時効・消滅時効ともに、時効の効果を得るためには直接利益を受ける者が必要な時間を経過した後に時効の利益を主張する必要があります。

この主張を時効の援用といいます。

事例1)Aが甲債権の担保としてC所有の不動産に抵当権

→ 物上保証人Cは、Aに対して債務を負っていない

→ 甲債権が消滅 = 同不動産の処分を免れる地位にある

→ 甲債権につき消滅時効を援用することができる

= 物上保証人Cは、甲債権につき消滅時効を援用することができる。

事例2)Bの詐害行為

→ B所有の不動産を取得したE = 甲債権が消滅すればAによる詐害行為取消権を免れる地位

→ 債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者にあたり、右債権について消滅時効を援用することができるものと解するのが相当である」としている。(最判平10.6.22)

「事項による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずる」としている。(最判昭61.3.17)

被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎない」としている。(最判平13.7.10)

時効の援用権者

時効の援用ができる者

  • 保証人(連帯保証人を含む)

  • 物上保証人

  • 抵当不動産の第三取得者

  • 詐害行為の受益者

✗ 物上保証人や抵当不動産の第三取得者は、被担保物件の消滅時効を援用することはできない。

時効の援用ができない者

  • 一般債権者

「破産者が免責決定を受けた場合には、右免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することはできない」としている。(最判平11.11.19)

  • 後順位抵当権者 → 「先順位抵当権の被担保物権の消滅に時効を援用することができない」としている。(最判平11.10.21)

= 後順位抵当権者は、被担保物件の消滅時効を援用することができない。

時効の利益の放棄

時効の利益の放棄とは、時効が援用できるにもかかわらず、それをしないという意思表示をすることです。

時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

✗時効が完成する前に放棄することができる

3.5.時効の完成猶予・更新

時効の完成猶予*

猶予自由が発生しても、時効の進行自体は止まらないが、本来の時効期間を過ぎても一定期間は時効が完成しないとする制度

時効の更新

一定の完成猶予事由が終了したり、債権者から権利の承認があったりした場合、それまで経過した期間は時効完成にとってまったく無意味なものとなり、新たに時効が進行を開始する。

3.5.2.裁判上の請求

147条1項 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は、完成しない。

1.裁判上の請求

2.支払督促

3.和解または調停

4.破産手続参加

150条2項 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない

訴えの提起(債権者が権利を行使した段階)

裁判が確定するまでは時効は完成しない

→時効の完成猶予

裁判確定(権利の存在が裁判によって認められた段階)

時効のカウントはゼロに戻り、新しく時効が進行する

→時効の更新

【民法】代理

5.代理

5.1.代理

5.1.1.代理とは

5.1.2.任意代理と法定代理

5.1.3.自己契約・双方代理の禁止

5.1.4.代理権の濫用

5.1.5.顕名

5.1.6.復代理

5.1.7.代理行為の瑕疵

5.2.無権代理

5.2.1.無権代理とは

5.2.2.本人の保護

5.2.3.相手方の保護

5.3.無権代理と相続

5.3.1.無権代理人が本人を単独相続した場合

5.3.2.無権代理人が本人を単独相続した場合(本人の追認拒絶があった場合)

5.3.4.本人が無権代理人を単独相続した場合

5.4.表見代理

5.4.1.表見代理とは

5.4.2.権限外の行為の表見代理(110条)

5.4.3.無権代理との関係

5.1.代理

5.1.1.代理とは
99条(代理行為の要件及び効果)
1項 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
5.1.2.任意代理と法定代理
5.1.3.自己契約・双方代理の禁止
108条(自己契約及び双方代理等)
1項 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

事例)A所有の建物売却の代理権を与えられたBがそのまま移転登記

→ BがAの代理人としてAの間で締結した契約(自己契約) = 無権代理行為とみなされる → Aに効果は帰属しない。

✕ 所有者に効果が帰属する

108条2項 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

✕ あらかじめ本人の許諾があったときでも、無権代理行為とみなされる。

→ 利益相反行為については、無権代理行為とみなされる。

  • 意思表示の瑕疵の有無 → 本人について決定する

✕ 使者を基準に判断する。

101条(代理行為の瑕疵かし)
1項 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

事例)Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安く購入

→ AがBの欺罔(ぎもう)行為につき善意無過失

→ であっても、相手方Cは代理人Bの詐欺を理由として契約の取消しを主張することができる。

102条(代理人の行為能力)
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

事例)建物の代理権をAから与えられたBが、Cから建物購入

→ Bが未成年者

→ AはBが未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張できない。

  • 制限行為能力者が任意代理人としてした行為については、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
103条(権限の定めのない代理人の権限) 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。 1号 保存行為 2号 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

事例)代理人BがAの留守中に現金を定期預金とする行為

→ 代理の目的である物の性質を変えない程度の利用行為にあたり、その効果は本人に帰属する。

5.1.5.顕名

5.1.6.復代理

契約を頼まれた代理人が病気やけがで動けなくなった場合等、不測の事態に備えて、民法では代理人がさらに代理人を選ぶ制度を選ぶ復代理という制度が設けられています。

104条 委任による代理人(=任意代理人)は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

✕ 本人の許諾を得たときでなければ復代理人を選任することができない。

105条 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
106条1項 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
106条2項 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う

✕ 本人に対しては何ら権利義務を有しない。

5.1.4.代理権の濫用

107条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為(無権代理行為)とみなす。

事例)本人の不動産処分の代理権を与えられたA

→ Bに譲渡の際、Bから受ける代金はAの借金の返済に使う意図をもって契約

1.Bが取引上相当な注意をしてもAのそのような意図を知ることができなかった場合

→ 本人に契約上に効果が帰属する。

2.BがAのそのような意図を知っていた、またはAのそのような意図を知ることができた場合

→ 代理権を有しない者(無権代理人)がした行為とみなされる。

5.1.7.代理行為の瑕疵

  • 代理人が相手方に対してした意思表示
101条1項 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

事例)Aの代理人Bが、Cを騙してCの建物安く購入 → Aは善意無過失 → CはBの詐欺を理由として契約の取消しを主張することができる。

  • 制限行為能力者が任意代理人としてした行為
102条 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。

事例)Aが未成年Bに建物購入権の代理権付与 → BがCから建物購入 → AはBが未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張できない。

102条ただし書 ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

✕ 行為能力の制限によって取り消すことができる。

代理権の消滅

111条(代理権の消滅事由)
1項 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。

1. 本人の死亡

2. 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。

✕ 代理人が保佐開始の審判を受けたこと。

5.?.?.権限の定めのない代理人の権限

103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

1.保存行為

2.代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

事例)Aの留守中、妻BがAの現金をA名義の定期預金 → 代理の目的である物の性質を変えない程度の行為 → その効果は本人に帰属する。

5.2.無権代理

5.2.1.無権代理とは

無権代理行為

勝手に本人の代理人として相手方との契約をしてしまった場合のことを無権代理行為という。

113条(無権代理)
1項 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2項 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

5.2.2.本人の保護

114条(無権代理の相手方の催告権)
無権代理人の相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

代理権のないことを知っていた(悪意であった)場合でも、催告をすることができる。

✕ 相手方は、代理権のないことを知らなかったときに限り、・・・本人に対して催告をすることができる。

事例)Aの子BがAに無断でAの代理人と称してCに土地を売却

→ Cが相当の期間を定めて、追認するかどうかAに対し回答を催促

→ Aから期間中に回答なし

→ Aは追認を拒絶したものとみなされる

✕ 推定される。

5.2.3.相手方の保護

115条(無権代理の相手方の取消権)
代理権を有しない者(無権代理人)がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

無権代理行為につき、相手方は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる

事例1)AがB所有の土地をBの無権代理人と称してCに売却

→ 代理権のないことを知らなかったCが契約取消

→ Bは代理行為を追認することができない。

Cが取消権行使すること = 本人Bに効果が帰属しないことが確定する。

事例2)Aの子B

→ Aの無権代理人としてAの土地をCに売却契約 → Aが追認

→ Cは契約を取り消すことができない。

Aが追認 = 相手方Cは取り消すことができない。

本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。

116条(無権代理行為の追認)
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
117条(無権代理人の責任)
1項 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

事例1)Aの子B(未成年)

→ Aの無権代理人として土地をCに売却契約

→ Aが追認拒絶

→ CはBに対して履行または損害賠償の責任を負う。

Cは無権代理によって契約を締結したが、Aが追認を拒絶したため、Cは期待していた土地の所有権を取得できない。この場合、第117条に基づいて、Cは無権代理人であるBに対して履行または損害賠償を請求することができる。

✕ 履行の請求をすることはできるが、損害賠償の請求をすることはできない。

事例2)A所有の土地

→ Aの子Bが無権代理人としてCに売却

→ Aが死亡 → Bが単独相続

→ Bは本人の資格に基づいて本件売買契約につき追認を拒絶することができない。

「本人自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解する。」(最判昭40.6.18)

事例3)Aの子B →

Aの無権代理人としてCに売却

→ Aが追認を拒絶して死亡 → Bが単独相続

→ 無権代理行為は有効にならない。

「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない」としている。(最判平10.7.17)

事例4)Aの子B → Aの無権代理人としてAの甲土地をCに売却

→ Aが追認または追認拒絶しないまま死亡 → BがAを相続

→ 「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、・・・、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではない」としている。(最判平5.1.21)

事例5)BがAに絵画を預けた

→ Aが無権代理人と偽ってCに売却 → AがBを共同相続

→ Cは「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない」としている。(最判平5.1.21)

✕ Cは、Aの相続分に相当する共有持分については、当然に権利を取得する。

事例6)A名義の甲土地、Bが買い受ける契約

→ Aの父Dが、Aの無権代理人として売買契約を締結

→ 父Dが死亡しAが単独相続

→ AはDの法律行為の追認を拒絶することができない。

「本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずる。」としている。(最判昭48.7.3)

✕ 損害賠償の責任を免れる

事例8)A所有の甲土地

→ 無権代理人と称したAの子BがCに売却

→ Bが死亡、Aの妻DがAと共同相続 → Aも死亡しDが相続

→ 「無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずる。」としている。(最判昭63.3.1)

事例9)A所有の甲土地 → 無権代理人と称したAの子BがCに売却

→ Bが死亡、Aが相続

→ 「Aは本人の資格において本件売買契約の追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任を免れることはできない。」としている。(最判昭48.7.3)

事例10)Aが海外出張し生死不明、10年経過

→ 失踪宣告のAの相続人は妻Bと子Cの2人

→ Cが失踪宣告前にAの無権代理人としてDにAの土地売却

→ 「共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない」としている。(最判平5.1.21)

事例11)Aの子B → Aの無権代理人として甲土地をCに売却

→ Aが死亡 → BとAの妻Dが共同相続

→ Dの追認がなければ

→ 「共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではない」としている。(最判平5.1.21)

5.4.表見代理

5.4.1.表見代理とは

無権代理人に代理権があると信じた者を保護するために、表見代理という制度が設けられている。

1.109条1項 代理権授与の表の表見代理

2.110条 権限外の行為の表見代理

3.112条1項 代理権消滅後の表見代理

109条(代理権授与の表示による表見代理等) 1項 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

事例1)本人から投資の勧誘を行う者として雇われたA

→ 本人の代理人としてBと投資契約

→ 投資金を持ち逃げ

→ 「勧誘それ自体は、・・・法律行為ではない。・・・代理する権限を有していたものということはできない」

→ 表見代理は成立しない(最判昭35.2.19)

109条2項 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば代理権授与の表示による表見代理の責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う

事例)Aは、Bに代理権付与した旨をCに表示

→ 代理権の範囲内でBがCの間で行為

→ Aが表見代理の責任を負うべき場合において、BがCとの間でその代理権の範囲外の行為をしたとき

→ Cがその行為についてBの代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、Aはその行為について責任を負う。

110条 代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人は、その行為について責任を負う。

代理人が本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、代理人の代理権を信じたものではないが、・・・、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、民法110条の規定を類推適用して、本人がその責に任ずるものと解するのが相当である。」としている。(最判昭44.12.19)

112条(代理権消滅後の表見代理等)
1項 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

✕ 代理権の消滅の事実を過失により知らなかった第三者に対しても責任を負う。

「表見代理は本来相手方保護のための制度であるから、無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反する」としている。(最判昭62.7.7)

【民法】意思表示

4.意思表示

4.1.意思表示とは

4.2.心裡留保

4.3.虚偽表示

4.4.錯誤

4.5.詐欺

4.6.強迫

4.意思表示

4.1.意思表示とは

4.2.心裡留保

93条(心裡留保) 1項 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
93条1項ただし書 ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

例)AがBに「車を10円で売る」と言った

→ Aの冗談をBが信じた場合:有効にしてBを保護

→ Bが最初から知っていたり明らかな冗談を見抜けなかった場合:保護する必要がないため無効

第三者の保護
93条2項 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
  • 意思表示の無効

→善意の第三者に対抗することができない

通謀虚偽表示

通謀虚偽表示とは

例)表意者Aが、第三者Cから差押えを逃れるために、相手方Bと通謀して売買契約を結んだことにした

→ この仮想売買を有効にすると、財産隠しが簡単にできてしまう

→ Cは無効を主張して、Aの土地を差し押さえることができる。

94条(虚偽表示) 1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
第三者の保護
94条2項 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
  • 表意者(A)だけではなく相手方(B)も善意の第三者(C)に対抗することができない

✗ 相手方は対抗することができる。

  • 「善意の第三者」に対抗することができず、「第三者が「無過失」であることまでは必要とされていない。」(大判昭12.8.10)

✗ 過失があるときには、無効を主張できる

  • 一般債権者(D)が債権者代位権行使のための要件を満たした場合

→ Aの有する返還請求権を代位行使して、Bに対して甲土地をAに返還するよう請求することができる。

94条2項の第三者

仮装譲渡人(A)は、虚偽表示の無効を善意の第三者(C)に対抗できない。

  • 不動産の仮装譲受人(B)から抵当権の設定を受けた者(C)

  • 仮装譲受された目的物に対して差押えをした一般債権者

目的物に対して差押えをした一般債権者は、94条2項の「第三者」にあたる(大判昭12.2.9)

→ 差押え前の一般債権者=新たに「法律上の利害関係」を有するに至っていないので94条2項の「第三者」に当たらない。

  • 「虚偽表示の相手方(B)との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた者(C)のみならず、その者(C)からの転得者(D)もまた右条項にいう第三者にあたる。」としている。(最判昭45.7.24)

  • 仮装債権の譲受人

= 94条2項の第三者にあたる(大判昭13.12.17)

→ 債務者に対して売買代金の支払を求めることができる

事例1)Aの土地、Bと通謀してBに仮装譲受

→ Bが建物建築

→ Bが善意の賃借人Cに賃貸

→ Aは虚偽表示の無効を建物賃借人Cに対抗できる。

= Cは法律上の利害関係を有するものと認められないから、第三者にはあたらない

事例2)Aの土地、Bと通謀してBに仮装譲受

→ Bの債権者である善意のCが、当該土地に差押え

→ Aは、虚偽表示の無効をCに対抗できない。

94条の類推適用

事例)Aの甲土地をBが買い受ける契約

→ 甲土地は実際はC所有、CがAに無断で所有名義人をA

→ それを知らないAがBと本件売買契約

→ BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができる。

「所有者は、民法94条2項の類推適用により、登記名義人に右不動産の所有権が移転しないことをもつて、善意の第三者に対抗することができないと解すべき。」

  • 相手方のない単独行為

事例)財団法人設立、設立関係者全員の通謀

→ 出損者が出損の意思がないにもかからわず一定の財産の出損を仮装して虚偽の意思表示を行った場合でも、

→ 法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為

→ 94条は類推適用される=仮装の財団法人の設立の意思表示は無効

錯誤

取り消せる

95条(錯誤) 1項 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
  1. 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

2.表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

→ その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる

95条2項 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

例)Aは「土地が値上がりするはずだ」と思った動機からBの土地が欲しいと思い、意思表示

→ Aがなぜ土地を買おうと思ったのかという動機をBに説明していれば、取消しを主張できる。

取り消せない

原則として取消しをすることができない。

95条3項 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、意思表示の取消しをすることができない。
1号 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
2号 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
95条4項 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

相手方の誤認

  • 「売買」 → 重要な錯誤とならない

  • 「賃貸借」「委任」 → 重要な錯誤となる

※相手方が誰であるかが重要になるため

詐欺・強迫

96条(詐欺又は強迫) 1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
  • 詐欺による意思表示は、取り消すことができる = 取り消されるまでは有効である。

→ 善意かつ過失がない第三者に対抗することができない

→ 詐欺の事実を過失により知らなかった第三者には対抗することができる。

第三者が詐欺

96条2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる

= 相手方が善意の場合や、善意でも過失があった場合に取り消すことができる。

事例)A所有のものをBに売却

→ Aが第三者Cの詐欺によって安価で譲渡する意思表示

→ Bがこの事実を知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があったときに限り

→ Aは取り消すことができる。

96条3項 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

→ 詐欺の事実を加湿により知らなかった第三者には対抗することができる。

強迫

96条1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

第三者が強迫

  • 相手方に対する意思表示について第三者が脅迫をした場合においては、相手方が善意無過失であったか否かにかかわらず、その意思表示を取り消すことができる。

= 取消前の第三者が善意無過失であったか否かにかかわらず、取消前の第三者に対抗することができる

事例)AはBの強迫により土地を安価で売り、第三者Cはこのことを知らずにBから買い受けた

→ AはBとの契約を取り消し、Cに対し所有権を主張することができる。

無効と取消し

無効

119条(無効な行為の追認) 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。

✗ 追認によって効力を生じる。

119条ただし書 ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

→ 新たな行為をしたものとみなされる

✗ 「行為の時」にさかのぼって効力を生じる。

取り消すことができる行為
120条(取消権者)
1項 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる
2項 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる

✗ 取り消しうる法律行為は、制限行為能力者又は瑕疵ある意思表示をした者に限り取り消すことができる。

事例1)BがAに騙されてAから金銭借り入れ

→ CがBの保証人となった

→ CはAの詐欺を理由としてAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことはできない。

取り消すことができるのは

  • 瑕疵ある意思表示をした者

  • その代理人若しくは承継人

121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

✗ 取り消したときから無効となる。

122条 取り消すことができる行為は、第120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない

→ 取り消すことができる行為を取消権者が追認

→ 以後、取り消すことはできない。

96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
125条5号 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について当該行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡をしたときは、追認をしたものとみなす。

事例)BがAに騙されてAから絵画購入

→ Cに転売

→ BがAの詐欺に気づいてAとの売買契約を取り消すことができる。

  1. BはAに騙されて絵画を購入している。これは詐欺による意思表示にあたるため、Bは民法第96条に基づいて、この売買契約を取り消す権利を有している。

2.重要なのは、Bが詐欺に気づいた時点。BがCに絵画を転売した後で詐欺に気づいた場合、Bが詐欺に気づく前に行った行為(この場合は転売)は、詐欺に基づく売買契約の取消しに影響を与えない。

3.民法第125条5号は、Bが「追認をすることができる時以後」に権利を譲渡した場合に適用される。つまり、Bが詐欺に気づき、その詐欺に基づく契約を取り消す権利があると認識した後に、その絵画を譲渡した場合、その行為は追認とみなされる。

4.BがCに転売した後に詐欺に気づいた場合、その転売行為自体は詐欺の追認とはみなされない。なぜなら、転売時点ではBは詐欺に気づいておらず、取り消し権を行使できる状況ではなかったから。

→ したがって、BはAとの売買契約を取り消すことができる。

126条前段 取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
121条の2第3項 行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

未成年者Bが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、後に金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した金銭につき現存利益のみ返還すれば足りる。なお、Bが受領した金銭の一部を生活費に充てた場合には、これによって本来生活費に充てるはずであった金銭の支出を免れているため、「現存利益」として残っていることとなる。(大判昭7.10.26)